挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第1章「禁忌破り」

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

43/388

第1章「禁忌破り」40 何が彼女をそうさせる (挿絵追加 2014/6/17)

マヤルカは青ざめた。破れた扉から昇降口での惨状を知った。凄惨な殺し合いの果てに、負傷者と死体が十数体も転がり、床と壁と天井は血と銃弾の痕で汚れていた。
カレナードは彼女が握り締めたままの銃を取った。
「私、玄街を撃ったわ…。殺してしまった…」
「僕もナイフを投げました。そしてそこで死んでます。彼らはガーランド・ヴィザーツを殺しに来たのです。こうなって当然です。お嬢さんはこれ以上見てはいけません」
「え、ええ、そうね。見ていられないわ」
2人は昇降口が見えないように扉から離れようとした。ピード・パスリが今度は2人に銃を向けた。
「勝手に動くな。おい、お前、さっきナイフを投げたな。余計なことをするんじゃない」
「切られた人はどうなったのですか」
カレナードの問いにピードは素っ気なかった。
「心配いらん」
ヤッカ隊長が報告を受けていた。担架をかついだ衛生兵が到着し、負傷者に応急手当を施し始めた。不意にピードが不動の姿勢を取って、奥の通路の方へ向き直った。
ライトグリーンの軽装戦闘服を着た女官の一団が現れた。その真ん中に、輝くようなオレンジの戦闘服に身を包んだ女王がいた。彼女の額に宝石の如く威厳がきらめいた。カレナードはその姿に安堵した。女王マリラの美しさは、彼に血生臭い現実を忘れさせた。
一同はかしこまったが、即座に女王は言った。
「皆、仕事を続けなさい。ヤッカ、現時点での報告を頼む」
女王は惨状を見回し、一瞬カレナードと目が合った。ヤッカが報告を終えると、女王は艦長を呼ぶように言いつけ、それからピード・パスリに禁忌を犯したアナザーアメリカンはどこかと訊いた。
「私の前に呼びなさい。」
カレナードはピードの合図で進み出た。女官達の中央で、マリラは毅然と立っていた。10年前と同じ、厳しくも慈愛を含んだ眼がそこにあった。女王の前でひざまずき、頭を下げた。彼の頭上に、意外な言葉が落ちてきた。
「カレナード・レブラント、この事態はお前が引き起こしたのだ。分かるか。お前はガーランドに玄街の者を引き入れた。この罪を何で償うか」
挿絵(By みてみん)
カレナードは愕然と女王の言葉を聞いた。
「お前は全てを私に捧げると、名前を、血と肉を、魂をも捧げると呼ばわったが、それが何を意味するか分かっているのか。
私が死ねと言えば死なねばならぬ。
どのように抗おうとも、最後には己自身の意思で生きることを諦めねばならぬ。
また勝手に死ぬこともならぬ。すなわち奴隷となるに等しい。その覚悟を問う。面を上げよ」
カレナードは顔を上げ、女王を見た。
彼は別の人物の前にいるのかと疑った。血の通わぬ女がそこに居た。この数十秒の間に彼女に何が起こったのか、彼には分からなかった。女王から一切の人間らしさが消えていた。威厳より慈愛より、冷たい鉄の感触が彼女を覆っていた。
彼はうろたえたが、伝えるべき事があった。
「僕は犯した過ちを償うためにさらに禁忌を犯しました。僕の生命はあなたのものです。どうかマヤルカ・シェナンディの呪いを解いていただきたいのです」
女王はほとんど感情のない目で彼を見下ろした。
「簡単に命と言う。では覚悟を見せるがいい。ヤッカ、こやつを明日の正午まで吊るせ。生きていればよし。死ねばそれまでだ。説明してやれ」
カレナードは浮き船に乗ったものの、再び命を掛けることになった。すでに引き下がることも出来ない。残るはこの試練を生き抜くのみとなった。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ