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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第1章「禁忌破り」

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第1章「禁忌破り」39 血塗られた乗船

注意・生々しい殺し合いの場面があります
ガーランドの灯火は徐々に近づいて来た。
夕刻、いよいよガーランドの船体が双眼鏡なしで見えるまでになった。用意した薪に火を点けると、荒地にマリラの紋章が燃え上がった。それは間違いなくガーランドに訴求する炎となった。カレナードとマヤルカは松明を持った。松明には炎を青白くする薬を塗ってあった。それを持って、燃え上がる紋章の傍に立った。浮き船の船首が上空にさしかかった。圧倒的な質量が頭上を過ぎて行く。
2人は固唾を飲んだ。
ガーランドはすでに通常飛行から超低速飛行に入っており、断崖の一帯にエンジンの唸りが響きわたった。全長3000mの浮き船は断崖に沿って高度を下げていた。船底に縦に伸びるオレンジ灯火の列が、女王の記号を200mほど通り過ぎたあたりで点滅し始めた。風圧が2人を囲んだが、ひるまずにそこに立った。
ガーランドはほぼ停止した。灯火は点滅するのをやめて、真昼のような明るさで地上の少年と少女を照らした。前方に一条の白い光が降りて来た。
「あそこに呼んでいるわ、カレナード!」
白い光の中へ走った。命を賭ける時が来たのだ。寒さにもかかわらず、汗が滲んだ。どこからか自分達を見ているヴィザーツの気配を感じた。カレナードは一度深呼吸して息を整えた。そして、体全体を声にして禁忌を口にした。身を滅ぼすであろう禁断の言葉がほとばしった。
「ガーランドの全てのヴィザーツ達よ、聞き届けよ。我が名はカレナード・レブラント。
ガーランドの女王、マリラ・ヴォーに我の全てを捧げます!我が名、カレナード・レブラントを捧げます!我が身の全て、心臓と血を、命を、そして心を、我が魂をも捧げます!
この供物と引換えに、マヤルカ・シェナンディが受けた玄街の呪いを解いて戴きたい!女王マリラ・ヴォーよ、どうかこの願い!聞きとどけ給え!」
マヤルカは約束を守った。彼女はカレナードがアナザーアメリカ最大の禁忌を犯すのを必死で見守った。
全ての灯火がグリーンに変わった。静かに昇降口が開き、無人のゴンドラが降り始めた。2人は心の中で快哉を叫んだ。だが、ゴンドラの着地点へ歩み寄ったとき、ガーランドのエンジンが轟音を上げた。ゴンドラを降ろしながらも、船そのものは上昇を始めた。2人は松明を投げ出し、駆けた。ゴンドラに乗らなければ終わりだった。ガーランドの灯火で、平原の先に散らばる小山が見えた。その一つに駆け上がってゴンドラに滑り込んだ。
その時、玄街のヴィザーツたちの黒いマントが小さな飛行物で昇降口に飛び込んだ。
彼らは2人をずっと追ってきたのだ。彼らもまたガーランドに乗る機会を待っていた。
昇降口の中で銃声と叫び声が聞こえた。ゴンドラは激しく揺れて、2人は突っ伏した。下から新たに玄街の一団が飛んできた。それを目掛けて銃弾が放たれた。弾は2人をかすめて何人かの玄街を落下させた。カレナードはマヤルカを抱きしめて弾から守った。
「今ここで死んでもマヤルカを浮き船に乗せる!」
戦闘中の昇降口にゴンドラが着いた。ピード・パスリが防弾の盾と一緒に2人の側へ滑り込んだ。
「早くこっちへ来い!」
カレナードはマヤルカをピードの方へ押し出した。盾の影に彼女を入れ、3人は扉の後ろまで走った。ヤッカの声が何かを命じていた。銃声が続いていた。
「ここでじっとしてろ。」
それだけ言うとピードは盾を構えて、扉の影から素早く戦場に戻った。
扉に何発か弾が当たった。玄街ヴィザーツが扉を破り、銃を向けた。マヤルカが素早く銃を構え、撃った。玄街に当たり、それは武器を落とした。ガーランド警備兵が横からとどめをさした。その警備兵に別の玄街が剣で切りつけた。警備兵は倒れた。剣を振り上げた玄街めがけてカレナードの小さなナイフが飛んだ。大した傷はつかなかったが、一瞬動きが止まった玄街めがけて、ピードが容赦なく弾を撃ち込んだ。
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