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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第1章「禁忌破り」

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第1章「禁忌破り」1  カレナード、禁忌を犯す(挿絵有)

アナザーアメリカ創生歴2499年の冬の夜、16歳のカレナード・レブラントは浮き船ガーランドの真下にいた。彼の傍らにはマヤルカ・シェナンディがいた。
全長3000mに及ぶ巨大な飛行物体であるガーランドは、タラ高地最南端の断崖上に微速降下を始めた。船底が頭上に迫った。凄まじい風圧が二人を襲った。カレナードの束ねた髪とマントが激しく舞い、マヤルカはカレナードにしがみついた。
船底に並ぶオレンジ色の灯火の中から一条の白い光が降りるのを確認した二人はそこに走り込んだ。
挿絵(By みてみん)
カレナードは生命を賭ける時が来たと知っていた。彼は身を滅ぼすであろう言葉を、全身を声にして叫んだ。
「ガーランドの全てのヴィザーツ達よ、聞き届けよ。
私の名はカレナード・レブラント。
今より、ガーランドの女王マリラ・ヴォーに我の全てを捧げます!
我が名、カレナード・レブラントを捧げます!
我が身の全て、心臓と血を、命を、そして心を、この世に一つの我が魂をも捧げます!
この供物と引換えに、マヤルカ・シェナンディが受けた玄街の呪いを、どうか解いていただきたい!
女王マリラ・ヴォーよ、この願いを聞きとどけ給え!」
寒さにもかかわらず、彼の額に汗が滲んだ。
ガーランド女王がこの禁忌の呼びかけに怒り、彼らを拒否すれば、間違いなく命はなかった。その場で撃たれても文句を言えない、アナザーアメリカで最大の禁忌破りだった。
マヤルカは祈った。15歳の赤い髪の少女は全身全霊で祈った。
「どうか!どうか、女王の慈悲がありますように!」
カレナードはひたすら船底を見据え、応えがあるまでを耐えた。
その間、脳裏には16年の記憶が次々と走った。
「父さん…!まだ、あなたのところへ行けません。どうか僕に運と力を与えてください!」
父の姿が幻のように浮かんで消えた。
彼の父、ヒューゴ・レブラントが身重のカレワラン・マルゥと出会ったのは、この時よりちょうど16年前のことだった。彼はオルシニバレ領国南部の山道で乗合馬車に揺られていた。地質学者で井戸掘り名人でもある彼は仕事を一つ終え、休養がてら気象学の研究機関を訪ねるところだった。
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