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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第9章「飛翔」

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第9章「飛翔」64 冬至祭

カレナードの三人称はまだ彼と彼女の両方だった。
周囲は適当に使い分けていたが、それは冬至祭を境に「彼女」へと傾いた。
霜二月の二十四日、大宮殿前の大通りに年越しの祠が据えられた。そこではワイズ・フールがかなり本気でお囃子を奏でていた。
彼は新年を言祝ぎながら、ときどき『艦長はスケベ』『情報部副長の禿オデコ』の合いの手を入れた。たまに『女王はツンツンデレデレ』と詠った。
大宮殿では女王が列をなしたヴィザーツ一人一人と新年の挨拶を交わし、冬至祭の南瓜菓子を手渡した。。
その日、盛装に身を包んだヴィザーツたちが見たのは、女王と共にいる不思議な乙女だった。かつてアナザーアメリカンの少年で、紋章人となり、さらに女王の恋人となった乙女。
彼女に曙の光のような眩さが宿り始めていた。
彼女は女王とほぼ同じ衣装を着けていた。一つだけ違うのは真珠色のマントの下のドレスだ。女王は淡い生成りのサテンに白絹の糸で刺繍の衣装だが、カレナードのそれは漆黒のサテンに濃い灰色のリボンが縫いつけてあった。
二人は髪を高く結い、その上から小さな花飾りを散らしたベールを垂らしていた。
女王の眼差しが煌めき、紋章人の眼差しが煌めき、瑞々しく周囲を照らし、長い葛藤と誤解を経たあとの安息を放った。
カレナードは女王の傍らに控え、菓子の籠を手にしていた。
大宮殿のバルコン二階でマイヨールとトペンプーラは久しぶりに杯を交わしていた。
「やはりワタクシの眼に狂いはなかったでしょ、マイヨール先生」
「こうなって良かったと思いたいわ。女王と一緒にいる彼は落ち着いた感じがするわ」
「それは女になったという意味ですか」
「あなたにしては野暮なことを。トペンプーラ」
「吾輩、やはり男ですからネ。未知の領域です。が、幸せそうではありませんか」
そこへ艦長が嬉しそうにやってきた。
「まことに喜ばしい。紋章人にダンスのお相手を申し込んできた。もちろん最初は女王と彼女が踊りますがね」
トペンプーラは「では、ワタクシも参戦デス!」と杯を置いた。
マイヨールは艦長を振り返った「あの子、忙しい夜になるわね」
ホワイエの方ではタラ高地で補給したばかりの酒食が並べられ、訓練生の胃袋をも満たして行った。夕方から夜にかけてのダンスパーティを前に、ヤルヴィとアヤイは腹ごしらえをしていた。傍でシャルが故郷のガーリックチキンを頬張っていた。
「ヤルちゃん、大好きなカレナードをマリラさまにとられて寂しいんじゃないの」
「ふん!僕は女王様の大事な人に横恋慕するほど子供じゃないからね。まだキリアンの方を心配してあげたらどうよ、屁の河童」
アヤイも加わった。
「キリアンの病気は重いのかい」
ヤルヴィは少し意地悪く言った。
「ふん!重症だよ」
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