挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第9章「飛翔」

386/388

第9章「飛翔」63 まだまだよねー

皆は朝っぱらからいいものを見たとばかりに拍手と口笛を鳴らしつつ仕事へと散っていった。女王もカレナードに「あとで」と耳打ちして、朝の公務に出掛けていった。
友人たちがカレナードに駆け寄って、代わる代わる抱きしめた。
マヤルカが寂しい笑顔で言った。
「さっきは結婚式みたいだったわ」
「ごめんよ、マヤルカ。僕は約束を果たせなかった」
「そんなことより、マダム・カレナード。約束を破ったらどうするか覚えてる」
「忘れた」
「こうするのよ」
マヤルカはカレナードの唇の横にキスをした。
「さようなら。男のカレナード。私、もっと素敵な男を探すわ!」
道化は「あちらもこちらも痴話喧嘩ー!」とぴょんぴょん跳ねた。マヤルカが道化を追いかけ、バカバカと怒った。
霜一しもいち霜二しもに月は矢のように過ぎ、浮き船は北メイス領国から海上を南下した。冬至祭はマルバラ領国のタラ高地で迎える予定だった。
新参訓練生は全員が進級試験に合格し、霜二の月中旬には住み慣れた部屋を離れた。各班は解散し、二年生からは居室を自由に探し出せるとあって、引っ越しは賑やかだった。
乗船してくる新参訓練生の群れをからかっているナサールは首席で試験を突破していた。ミシコは激しくトップを狙ったが、第五席に甘んじ悔しがった。
「サナールの奴、なんて底力してやがる!」
トランクを担いだ彼は下層天蓋下タキュ通り51番のアパルトマンの玄関で、赤い短髪の少年にぶつかりそうになった。どこかで見た顔だと思った。
「マ、マヤルカ・シェナンディ!」
「似合うでしょう」
彼女の長い髪が消え、すらりとした少年がそこに居た。白いパンツスーツを着こなし、中性的な妖しさがあった。
管理人室からリンザ・レクトーが出て来た。
「あら、元男子V班班長。総合第五席おめでとう。もっとも病理学のトップはマヤちゃんだったけど。彼女と私の部屋は312号よ。あなたの部屋、どこなの」
「キリアンと二人で215号室だ」
階段を上り始めるとマヤルカが窓から手を振った。
「カレン!カレナード!私の部屋はこの上よ!」
試験終了後、誰からともなくカレナードをカレンと呼ぶ者が増えた。そのカレンはスカートを履いているが、大股だった。
リンザとミシコが同時に言った。
「あの歩き方、まだまだよねー」「まだまだだなー」
カレナードは手を振ってタキュ通り51番を通り過ぎ、その先のリト通りのアパルトマンに入っていった。リンザは言った。
「女王さまの恋人じゃなきゃ、同居したかったんだけど」
マヤルカは髪に手をやった。
「駄目よ、カレンは一人部屋がいいのよ。彼、忙しいんだから」
「何で忙しいのやら」
リンザの返事に顔を見合わせたマヤルカとミシコは「それを言うなよ」と突っ込んでから少し赤くなった。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ