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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第9章「飛翔」

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第9章「飛翔」62 新生の儀式 

マリラは甲板に置かれた謁見用の壇に立ち、群集の視線に暖かな含み笑いを感じた。
それもそうであろう。
彼らは賢くて分かっているのだ。女王がやっと化け物の仮面を外したことを喜んでいる。2500年を生きていても私は人であるとマリラの全身が叫んでいた。
「ヴィザーツたちよ!私の愛しい人々よ!待ちに待った朝である!」
女王はわざと大袈裟に言った。
「昨夜はさぞ眠れぬ夜であったろう」
ワイズ・フールは女王が自分のお株を奪っていくのを眺め、甲板上の人々は吹き出すのをこらえていた。
「昨日午後の放送事故が皆の睡眠妨害となったことは、まことに不幸であった!心よりお詫びいたすものである!」
こらえ切れずに多くの者が笑った。
「これより先の安眠のため、左手に私の紋章を持つ唯一の人間が何者かを存分に示し、これより先この者が一人前のヴィザーツになるまで皆が惜しみなく鍛え支えることを私は切に願う」
カレナードの意識は突然広がった。
マリラの言葉に応えるかのように、我が身は私人ではなく今から公人の立場に生きるのだと、新しい彼が生まれたのである。
マリラは彼に飛行艇を無断で持ち出した罰を与えた。
それは彼が『彼女』になるための通過儀礼でもあった。
「カレナード、服を脱ぎなさい。私のヴィザーツたちに玄街のコードに犯されたそなたの体を見せるのです」
カレナードは逃げ道を探さなかった。
こうして彼は朝の甲板の上で素裸になった。打撲と傷に当てた包帯だけが彼を覆っている。
ガーランドの乗組員が見たのは、今はまだ細いが、皮膚の下にしっかり筋力を持ち、じきに女になりそうな肉体だった。
上げた顔は真夜中の月のように白く、朝日が影を作ろうにも透けてしまいそうだった。
「乙女になりたての乙女だな」と誰かが言った。
女官たちがカレナードに柔らかいブラウスとペチコートを巻き、その上からペパーミントグリーンのロングスカートと胴着を加えた。
胴着は胸のくりが深く、どう見てもエロスを放っている。スカートが揺れると、素足がちらりと見えた。
こうして男としてのカレナードは公的には消え去った。残ったのは乙女の肉体とそこに宿る少年の心だ。
マリラは宣言した。
「これより彼女はマダム・カレナード・レブラントと呼ばれる。私の愛しい人である」
マリラの言葉が終わると、カレナードは群集に向かって一礼した。
道化はすかさず躍り出て群集を煽った。
「マリラさま!もっと!もっと皆様を楽しませてくださらねば!せめてキスくらいサービス!サービスゥ!」
エーリフは窓辺で「やれやれ」と頭を掻いた。
道化は女王の腕を取り、カレナードの元へと引っ張った。ヴィザーツ達は「オンヴォーグ!」のコールを繰り返した。
二人は唇を重ねた。まだ、ぎこちない接吻だった。
女王は「昨日も言ったが、私は愛に不器用なのだ」と可愛らしい言い訳をし、「解散!」と叫んだ。
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