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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第9章「飛翔」

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第9章「飛翔」60 生還の夜

トールスピリッツ八号機ではピードがカレナードを介抱していた。
「脳震盪に打撲と切り傷多数、擦り傷が少々。致命傷なし。装甲スーツなしで、こりゃあ奇跡だ」
彼はテキパキと医療コードを使い、応急手当をした。
カレナードにはまだ生き延びた実感がなかった。意識は戻っていたが、言葉が出なかった。体中の打撲の痕に、ピードが湿布薬を塗った布を当てていった。彼はけっこう世話焼きだった。
「とりあえずドルジンの予備アンダーを着せておくぞ。毛布があったかな。薄い保温シートだけじゃ体が冷えちまう。水飲むか?」
夜半になり、第二コクピットの天蓋から星が瞬くのが見えた。
ピードはカレナードに携帯食を渡し、自分も食べ始めた。
「いいから食っとけ。サージ・ウォールを飛び越えようとしたんだ。疲れてるはずさ。あとで鎮痛剤飲ませるぞ。それでちょっとは眠れ」
カレナードは一口を食べた。ようやく生きていると思った。
ピードは喋った。
「今日、初めてお前の体の事を知ったよ。手当するまで分からなかった」
「胸を見たんですね」
「きれいに隠しやがって。知っていれば、少しはお前を助けられたかもしれないが」
「どういうことです」
「俺は何歳に見える、カレナード」
正直に答えた。
「13か14ですか。でも、中身はもっと大人だ」
ピードはくくと笑った。
「俺はボルタと同い年なんだ。そうさ、俺の体はほとんど成長しない。お前と同じで、玄街のヤツらに変なコードをかけられたのさ」
「成長を止めるコード…。玄街はそんなことまで」
「お前のように性別が変わるのと成長が止まるのと、どっちがマシかなんて言うつもりはない。
俺は訓練生になったばかりの頃にやられたんだ。どんなに成績を上げても背は一年に数ミリ伸びてりゃいいほうだ。
死にたかったさ。
雨後の筍みたいにでかくなっていく周りの訓練生が哀れみの目で俺を見る。付き合った女は一人もいない。
未だに施療棟が解除コードを調べ続けているありさまだ。
俺は…もしマリラさまが手を差し伸べて下さらなければ、ここにこうしていやしないのさ」
「マリラさまが…」
「そうさ、カレナード。やけっぱちの俺をあの方は思い切り子供扱いした。不思議なことにちっとも嫌じゃなかった。それから俺はやっと航空部に居場所を見つけたんだ。
お前はどうなんだ、通信が完璧にオープンだったからな、全部聞かせてもらったぜ。馬鹿力はサージ・ウォールを制覇する!だな。
もっともお前だから出来たんだろう。
トールスピリットは瞬間的には2990mは超えるが、サージ・ウォール上の乱気流を超える余裕はないんだ。
お前を助けられたのは本当に間一髪のところだったのさ。
飛行艇のキャノピーだけ割れてたから、破片ごとお前を拾えたんだ。まあ、切り傷は我慢しろよ。
もし飛行艇が大破してたら、お前も大破だ。よく左腕がシートベルトを掴んでいたものさ。ほら、鎮痛剤」
青い薬瓶をトンと置いた。
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