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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第9章「飛翔」

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第9章「飛翔」59 小さな死

いきなり若く野太い声が降り注いだ。
「こちら、トールスピリッツ八号機ドルジン・イワノフ。ベラ・スリー操縦者を救助!」
「トール五号機ボルタだ。飛行艇回収に成功。これより帰投する!」
部屋中に歓声が起こった。キリアンは再びマリラの通信機に飛びつき、ドルジンに確かめた。
「カレナードは生きてるのか!」
「気絶しているだけだ。多少怪我はあるがな。今から高度2650まで降りる。こっちもギリギリだ。同乗のピードが彼を第二コクピットに収容するから詳しい事は待ってくれ」
エーリフは大声でトールの乗務員をねぎらった。
「よくやった!女王にかわり、感謝する!よくやった!」
そして忘れてはいないぞという顔で部下達を見た。
「さて。通信回線のスイッチに細工したのは誰なんだ」
彼は道化がいつも以上にふざけた格好で手を振っているのを確認した。
「やはりお前か」
それから彼は全艦に事の経緯を手短に伝えたのち、回線を元に戻した。
飛行艇はキャノピーと水平翼の一部が壊れたため、トール・スピリッツ二機で曳航し、ガーランドへの到着は翌日の朝になると連絡が来た。
マリラは通信機を外した。その時キリアンは見た、女王の目に湛えられた安堵の涙が、静かに落ちていくのを。
そして女王は一人で立っていた。周りの誰ともカレナード救助の知らせに抱擁を交わしたり、手を打ち合わせたりしない。女官長とアライアが傍に控えていたが、彼女たちは女王のために静かにしていた。
キリアンは無礼を承知で、ハンカチを女王の頬に押し当てた。
女王はハッとしたが、キリアンとV班の少年たちもまた泣いているのを見た。
「そなたたち、紋章人の良き友人であるな」
V班メンバーは女王と握手を交わした。その長い指と美しい甲を感じながらキリアンは悟った。
これからが始まりなのだ。マリラとカレナードは衆人監視の中で愛し合うだろう。カレナードがここに戻った瞬間から、彼はもうただの新参訓練生ではなくなる。ガーランド中が認める公式の恋人となる以外、彼は道がない。
おまけに飛行艇でサージ・ウォールを突破した初めての人間だ。
ミシコが彼の肩を叩いた。
「あいつ、一度死んだな」
キリアンはうなずいた。彼らはカレナードの小さな死に加担したのだ。
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