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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第9章「飛翔」

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第9章「飛翔」55 オープン回線

土壇場で少年の反抗心が燃え上がった。
「あなたに!あなたに分かりますか!マリラさま!唯一つ残っていた望みを失っては!生きられません」
カレナードが握る操縦桿に涙が落ちていった。
飛行艇は巡航速度を越えて加速し、船尾から白い航跡を描いた。
「ベラ・スリー、時速350kmに加速。限界性能に近づいています」
管制官の報告にマリラはタガが外れかけた。カレナードの行動を許せなかった。
「私に何を分かれと言うのだ。そなたこそ私の何が分かるか。私の傍にたかだか一年近くいたくらいで、思い上がるな!」
「違います!あなたに腹が立っているのです!あなたは僕の一切を否定し続けた!」
管制官たちはこの奇妙で、ただならぬ遣り取りに顔を見合わせた。
艦長がやって来た。彼は第一甲板へトール・スピリット二機緊急発進の指示を出した。
彼はトールを使ってサージ・ウォールの手前で飛行艇を確保するつもりだった。
この時、マリラと共に管制室に入っていた道化が通信回線のスイッチをいじくったのに誰も気づいてなかった。
マリラとカレナードの交信は続いていた。
「マリラさま、あなたに否定される事に耐えられません。だから、体の復元だけを支えにしたのです。しかし、それももう終わりました」
「私はそなたを否定した覚えはない」
「いいえ、あなたは十年前に僕を助けた記憶を持たないとおっしゃるが、どこかに非公式の記録があるはずです。
十年間、僕はあなたとの約束通り、思い出を誰にも語らず秘密にしたまま大切に仕舞っておきました。
心から御礼を述べたかった。
でも、逆にあなたを怒らせてしまった。
マリラさま、あの時あなたが嘘でもいいから、オルシニバレで生き延びた少年の謝辞を受け取って下されば、僕は左手にあなたの紋章を刻んだ事を喜んで受け入れたでしょう」
マリラは怒りに震えた。
「おのれ!禁忌を破り、私に全てを奉げると誓った者が、何を今更『喜んで受け入れたでしょう』だと!
そなたは裏切っておったのか!
そなたの心は不承不承に奉げられたものだったのか、カレナード!」
「裏切ってなどおりません!不承不承でもありません!
あなたに無いものねだりをした僕が愚かだっただけです!」
「私に無いものとは何だ。言え、愚か者」
女王と少年は共に破れかぶれになっていた。
「あなたは、僕が知っている十年前の美しく厳しい女王ではなかった!冷たく死んだような眼差しで、常に僕を憎んでおられたではありませんか」
「私がいつそなたを憎んだというか!思い違いをするな。私は、私が…そなたを…憎むだと…」
マリラが言葉に詰まった。
管制室のドアが開き、女官長とアライアが困惑の態で走り込んだ。
「マリラ様!大変でございます。
今までの通信がガーランド全ての部署にオープンになっております!」
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