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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第9章「飛翔」

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第9章「飛翔」54 カレナード、出奔する

彼は第三甲板へのメンテナンス階段を降り、搭乗員待機室の入り口まで来た。その脇にある警報装置に起動コードをかけ、非常ボタンを押した。警報が鳴り響き、甲板上にいる者は何事かと作業の手を止めた。
ニコラ・ブロスは、例の特型飛行艇の完熟飛行訓練に出る仕度をしていた。装甲スーツを着け、ボルタ教官と共にエンジン始動チェックを終えたところだった。
カレナードが狙ったのはその出発準備が整った特型飛行艇だ。
ボルタが「ここで待て」のサインを指で示し、詰所に走る隙にカレナードはニコラの死角から飛行艇のコクピットに滑り込んだ。彼はあっという間にドアを内側からロックした。
ニコラが気づいた時には遅かった。彼が乗るはずだった機体はエンジン音を上げ、滑走路に向かって動き出した。ニコラが叫んでいた。
「カレナード・レブラント!どうしたんだ、おい、止まれ!止まれったら!」
「すみません、ニコラ・ブロス!下がってください!」
ボルタが異変に気づき駈け戻ったが、カレナードは管制室の通信を元に空いた滑走路に入ってしまった。
「何を考えているんだ、レブラントは!管制室!飛行艇ベラ・スリーが無断発進だ」
第三管制室がベラ・スリーの機影を確認した時、それはすでに離陸したあとだった。
カレナードはサージ・ウォールまでの最短コースを素早く入力し直した。速度を上げれば、20分で到達する距離にいた。ガーランドが遠く後方へと退いて行く。彼はぽつりとつぶやいた。
「20分後、僕は死ぬ」
すぐにガーランドの管制室から通信が入った。
「ベラ・スリー、即時第三甲板に戻れ!」
カレナードは最後の交信のために通信スイッチを押した。
「こちら、新参訓練生カレナード・レブラント。無断で飛行艇を持ち出し、申し訳ありません」
「カレナード・レブラント、戻りなさい。君はサージ・ウォールに向かっている。危険だ。あまり時間はないぞ」
「戻れません。僕は、もうガーランドには戻りません。以上、通信を終わります」
「待て、レブラント」
カレナードが「さようなら」と言って、スイッチを切ろうとした瞬間だった。
「カレナード!そなたは何をしている!」
女王の声が響いた。
管制室でマリラがマイクを握っているのだった。
だが、女王の叱責がカレナードの心に根を張った絶望と怒りを表面に呼び戻した。
「マリラさま、僕は元の体に戻ることは二度とありません!男でもなく女でもなく生きることはできません。僕は」
「どの口が私に向かってそのような泣き言をいうか!」
マリラは彼の訴えを遮った。
「最初に言った筈だ、私に全てを奉げた者が自分勝手に生き死にを決めることはできぬと。
私の紋章をその手に刻んでいる限り、そなたは私のものだ。
男であろうと女であろうと、無断でガーランドを飛び出してただで済むと思うな!」
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