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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第9章「飛翔」

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第9章「飛翔」52 非情なり

女医は解析結果の詳細と結論に至った過程を説明したが、カレナードの耳には全く入っていなかった。復元不可能という一節だけがハンマーで殴られたように頭の中でガンガン響いているだけだった。
リリィは解析ファイルから目を上げ、事務的に「質問、あるかしら」と言った。
最初の衝撃から少しだけ現実に戻ったカレナードは血の気が引いていくのが分かった。そのままでは気を失いそうだった。彼は水を求めた。リリィの前で気絶したくなかった。ただの結果報告として述べているような彼女の前で、失態を演じたくなかった。彼の男としての最後のプライドが無様な態度を許さなかった。
リリィが水差しから注いだ水を飲み干すと、彼は訊いた。
「ドクトル、さっきX遺伝子が二重結合して動かないと聞こえましたが…」
彼女は学者然として答えた。
「女性の性遺伝子がダブルXなのは知ってるわよね。その二つのXが玄街コードで固まっている。それもただの固定ではなく、自動修復型固定作用という厄介なものよ。我々のコードでも玄街のコードでも、一つずつに離した瞬間に自動修復コードが働いてダブルXの状態に戻る、完全に戻るのよ」
「そこです。けど…離した瞬間に固定コードか何かで、その、玄街の自動修復作用を無効にできるのでは」
「やったわ。百万回の試行全てが失敗したわ」
カレナードは息を飲んだ。
百万回という数字は絶望そのものだった。
「で、でも、他に方法があるはず…何か、別のやり方が…」
「試したわ。二重結合自体の無効化、ダブルXをさらにダブルにしてそこからの無効化、さらには片方のX遺伝子の破壊。まだあるわ、100以上の方法を試した。でも、それを人の体で行えば、死ぬと分かった」
「そんな…」
「死ぬと分かって処置をするヴィザーツはいない。諦めてちょうだい。残念だけど、施療棟のヴィザーツが全力を尽くした結果よ」
「二重結合しているX遺伝子でも、減数分裂はするでしょう。それを元に復元できないのですか!」
「それも試したわ。でも人体は私達の考え以上に神秘で複雑な領域だった。その証拠に減数分裂したあなたのX遺伝子は受胎可能なのに、復元コード類には全く反応しない。あるいは拒絶反応があった。これを説明する手掛かりさえ見つからない」
「施療棟でさえ…解析できないと…」
リリィはファイルを閉じた。
「最初に言ったはず。コードは万能の魔法ではない」
カレナードはそれ以上そこに留まることはできなかった。椅子から立った瞬間、最後の心残りを思い出した。
「マヤルカ・シェナンディは…彼女の復元は可能ですか」
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