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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第9章「飛翔」

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第9章「飛翔」48 破滅へと

「マリラさまに会いたい…」
カレナードの口からその言葉が何度も漏れるようになった。
キリアンの一件以来、彼はどこに居ても孤独感に苛まれた。キリアンを親友として付きあうことは不可能に思われた。
V班の仲間は部屋を去ったキリアンを懐かしんだ。彼らはカレナードの不安定な部分をキリアンが支えていたのだと、やっと気づいた。その証拠に彼らはイラついているカレナードを持て余した。
アレクでさえ腫れ物に触るような態度になり、シャルは出来るだけマイペースを装い、ヤルヴィは怖がった。
だからと言って、キリアンを呼び戻すのは他班に対して示しがつかない。
ミシコはキリアンの代わりに十ヶ月訓練生を受け入れようと考えた。
メンバーが変われば、この鬱々とした状況に風穴が開くかもしれない。ガーランドに残る十ヶ月訓練生は間もなく新参訓練生棟に振り分けられるはずだ。それが一週間やそこら早まったところで不都合があるだろうか。
V班にやってきたのは、アヤイ・ハンザだった。
「よろしく頼むよ、カレナード。キリアンはどうしたんだい。同じ班だって聞いていたけど」
状況はむしろ悪化した。アヤイはV班に来て初めてカレナードの秘密を知った。素直な性格があだになり、彼は姉を見るようにカレナードを見詰めた。
カレナードは無言で怒っていた。何に対して腹が立つのか、すでに分からなかった。
無性に哀しかった。
気がつくと上層天蓋層へのエレベーターに乗っていた。その最上階で女王区画へのエレベーターに乗りかえれば、マリラに会える。胸の傷のことなど忘れていた。
彼は何も考えず、上に向かうボタンを押した。開いた扉の中にワイズ・フールがいた。
「おやまあ、奇遇なことで。紋章人」
返事はなかった。箱の壁を見詰めているカレナードの異様な雰囲気を、フールはそっとうかがった。不意にカレナードが言った。
「あなた…トリモチで死ななかったんですか…」
呪いに満ちた声だった。普段なら受けて立つフールだが、背筋に冷たいものを感じた。
「…ヤバい」
狂気がゆっくりと満ちていった。エレベーターの扉が開いてもフールは箱から出なかった。カレナードはまっしぐらに駈けた。油断していた近衛の間を抜け、勝手知った小接見室への廊下を矢のように走った。
彼の前に飛び出したのはアライアである。
「止まれよ、紋章人殿!」
すでに戦闘態勢に入っていたアライアはカレナード目掛けて一撃を放った。続いて女官候補生イアカ・バルツァが近衛と同じ短槍を構え、突っ込んできた。カレナードは足止めを喰らったものの、動きは止まらなかった。
「マリラさまはどこにおられるのです!」
アライアが呼子を拭いた。
「警備隊を呼んで!カレナードは普通じゃないわ」
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