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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第1章「禁忌破り」

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第1章「禁忌破り」34 偽兵士が広場を横切る(挿絵有)

新年の11日、正午にガーランドから飛行艇が7機、岬へと飛来した。小雨が降っていたが、公会堂まえの広場から大通りにかけて人波が押しあっていた。2人はマントと帽子を着けて、飛行艇の着地点から最も近いところに進んだ。
飛行艇の脇にヴィザーツ警備兵が4人ずつ立っていた。ヤッカ隊長は横に並んだ飛行艇のほぼ中央にいた。
女王の近侍が飛行艇を降り、続いて女王と女官が姿を見せた。女王は迎えに出たオーサ市長の礼に対し、ざっくばらんに笑顔を返した。群衆は歓声を上げ、帽子を振った。彼女は群衆に手を上げて応え、公会堂の中へ入るまで歓声は続いた。
「今だ。行ってくる。」
カレナードは歓声の中、帽子をマヤルカに預け、マントを脱いで片手に持った。マントの下から、ヴィザーツ警備兵の制服が現れた。
警備兵となったカレナードは群衆から離れ、飛行艇の方へ胸をはって歩きだした。早鐘を打つが如く鼓動を必死で隠し、ヤッカ隊長のところまで歩いた。わずか30秒がとてつもなく長かった。誰も止めることなく、カレナードはヤッカの隣に立った。
「伝令であります!」
ヤッカ隊長はカレナードの方を向いた。気付くまで一瞬の間があった。
「お前は…!」
「覚えていてくださいましたか、ヤッカ隊長。カレナード・レブラントであります。今日はお伝えすることがあります。すぐに帰ります。」
ヤッカは睨んだ。
「お前を逮捕し、オーサ市に引き渡すこともできるのだぞ。今度は鞭打ちで済むと思うな。」
カレナードは凄む隊長を見据えた。
「先日申し上げたことが真実である証拠を見せたらすぐ帰ります。確認していただきたいだけです。隊長はこれだけの市民の前で部下を逮捕させないでしょう。」
「ピード・パスリ、こちらへ!」
ヤッカは銀髪の少年警備兵を呼んだ。彼は鋭い目をしていた。
挿絵(By みてみん)
カレナードを見るなり、偽物の制服に気づいた。
「こいつの横に立て。静かにしていられないようなら撃て。」
ピードはぴたりと横につき、カレナードは脇腹に武器の感触を味わった。
「さっさと済ませよう、レブラントとやら。」
カレナードは出生証明書と1枚の写真、そしてその乾板を取り出した。
「これは僕が男であることの証拠です。こちらは2日前に撮った写真、乾板は写真に何の細工もしてない証明です。」
ヤッカは書類に目を通した。書類には16年前の南オルシニバレ連合公証役場の印があり、カレナードと両親の名前、そして男児誕生と記載されていた。
ヤッカは写真を見た。そこに写っているのは一糸まとわぬカレナードの姿であり、同時に未熟で若々しい女の肢体だった。ヤッカは乾板をあらため、カレナードに目を移した。
「玄街の仕業だという証明はどうする。」
「オルシニバレ市のカレント家が証人です。ベスティアンとアナのご夫妻です。ミシコ・カレントのご両親です。」
「カレントの両親を知っているのか。」
「ひと月前、調停完了祭最終日にお会いしました。マヤルカ・シェナンディの書類と写真もご覧になりますか。」
「ああ。見せてもらおう。」
ヤッカの目の色が少し変わっていた。カレナードは手応えを感じた。写真の中で恥ずかしそうなマヤルカが裸で仁王立ちになっていた。細い少年の体が辛さを訴えていた。彼女の出生証明書に「女子誕生」の文字を見たヤッカは短く唸った。黙って書類と写真をカレナードに返した。ピードが一歩離れ、ヤッカは声をかけた。
「オルシニバレ市のカレント家に問い合わせる。明後日の正午、ここで会おう。」
カレナードはうなずき、踵を返した。
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