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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第9章「飛翔」

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第9章「飛翔」45 特型飛行艇

ガーランドはミセンキッタ中央を過ぎ、オルシニバレ領国を縦断するコースに入った。季節は一気に進み、眼下の景色は黄金の秋に変わった。だが、カレナードの眼には色褪せた何かと燻ぶった火が宿ったままだった。
そんな十の月の半ば、彼はヒロ・マギアに呼び出された。キリアンとホーンも一緒だった。
三人が連れて行かれた先は甲板材料部の広大な開発部署のさらに奥だった。そこにはニコラ・ブロスたち航空部候補生やヤッカ隊長もいた。ヤッカが言った。
「こんなに集めてどうする気かね、マギア主任」
「空中戦専用に開発した小型飛行艇だからね、俺っちとしてはたくさん飛んでもらって改良に心血を注ぎたいわけ」
「この部署のテスト飛行だけじゃ不足か」
「実践的でなけりゃ意味がありません、ヤッカ隊長。それにね、この特型飛行艇は単独操縦機能を付けてあるんですよ。特化開発セクションの傑作!だからね、航空部のベテランから新米まで、試してもらわなきゃ意味がないっつーの!」
快活なヒロ・マギアと物作りの現場に漂う職人的なムードが、カレナードの気分を晴らした。
「ここの空気はシェナンディの工場に似ている」
彼は特型飛行艇の機体に触れてみた。軽金属の表面に何重ものコードコーティングと手仕事の跡を感じた。乗ってみたいと素直に思った。誰かの手が肩に置かれた。トペンプーラだった。
「やはりヒロに目を付けられていましたか。どう、飛んでみたくなる機体でしょ」
カレナードは頷いた。年上の友人は言った。
「空はいいですヨ。失った心をしゃんとしてくれますからネ」
その日、さっそく警備隊のベテランたちが操縦桿を握り、訓練生たちがコ・パイロットのチームを組んだ。一週間のテスト飛行の最後には、単独飛行が予定されていた。カレナードの心からマリラの面影が完全に消えることはなかったが、甲板でマギアチームと作業している間は恋心から解放された。キリアンは親友の表情が次第に明るくなっていくのが嬉しかった。
「そうだ、そのまま女王のことを忘れてしまえ。そして…」
彼もまた自分勝手な想いを隠し持っていたのだが、深刻にならないところが彼の性分だ。
五機の特型飛行艇は素晴らしい性能だった。小型だけに加速度は申し分なく、長距離を難なく飛んだ。
カレナードは最後の日に装甲スーツを着て単独飛行をした。ヒロ・マギアは彼にアドバイスした。
「もう体感してるだろうけどさ、操縦桿の赤いスイッチで一時的にグライダー機能で飛ぶから上昇気流が安定してる所で使ってくれていいよ。さ、行って行って」
彼の言葉どおり、特型飛行艇は2600メートル上空の太い気流の中でグライダーのように滑空した。カレナードはそのまま2950メートルまで機体を飛ばしてからエンジンを再噴射した。
ガーランドに戻る途中、ボルタ中尉の機体から「ヒヤヒヤさせやがって!このバカ!」と明るい声が飛び込んだ。
「すみません、データは取れましたか」
「おうよ、ばっちりだ。お前、心臓に毛が生えてるのかい」
「もちろんです!」
カレナードは女王にこの飛行記録が届けられることを密かに願っていた。
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