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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第9章「飛翔」

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第9章「飛翔」40 二人の女・マリラとグウィネス

グウィネスはベル・チャンダルを振り返った。
「ベル、私にシャドルー産の茶を淹れてくれ」
ベルは無言で首を振り、マリラは「上等の茶を用意してやれ」と命じた。
グウィネスはにやりとした。
「ベルは忠義者だ。私が選んでガーランドに送り込んだだけのことはある」
マリラもジーナもベルも玄街の女の言葉を無視した。マリラは訊いた。
「お前自身はどこにいる」
グウィネスは女王と同等の立場を示すかのように、椅子の上で脚を組んだ。
「遥か遠い所だ。側近が私の空っぽの体を守っているさ。お前は座らんのか」
「敵の前だからな。いい機会ゆえ言っておくぞ。これ以上調停機関に背くな」
「ふふ。ガーランド女王の力は所詮は悪であるというのに、私には叛逆するなというのか。
お前の高尚な調停の秩序とて完璧ではない。どのように綻びを繕おうと不完全だ。そして永遠でもない。
やがてアナザーアメリカンがサージ・ウォールの外側と接触するとき、外側の文明が勝れておれば、軟弱な調停制度はそれに支配される。我々なら逆に支配できるだろう。人間は戦わざるをえない存在だ」
「外界にそれほどの文明があれば、とっくにサージ・ウォールを越えてくる者がいたはずだ。来訪者が邪悪であれば、ガーランドがアナザーアメリカの盾になるだけのこと。
調停が万能でないことはとっくの昔に承知しているが、軟弱ではない。各領国が調停を必要とする以上、ヴィザーツは制度の欠陥を常に見直し時代に対応しているぞ」
それぞれに長老たる二人の女はしばし沈黙した。先に沈黙を破ったのはグウィネスだった。
「かつて人類は星の世界に手を伸ばしたというのに、我々はサージ・ウォールに囲まれた狭い世界で終わるのか。不可能を可能に変えたいと思わないのか」
マリラは静かに答えた。
「アナザーアメリカが狭い世界か。お前はほとほと了見が狭いゆえ、そう言うのだよ。
サージ・ウォールがあろうとなかろうと人間の世界は有限だ。何もかもが永遠でないのと同じだ。人が生きる世界は無限ではない。たった一つの地上で共に生きる覚悟、それが調停だ」
「つまらん生き方だ。妥協に妥協を重ねたあげく、あぶれ者に皺寄せを負わせるのがガーランドとアナザーアメリカンだ。汚いぞ」
「そのあぶれ者が玄街か。グウィネス、大きくなった組織の統制に骨が折れているのではないか。数は力なりとする考えが常に正しいとはも限らんぞ」
「我々の実数も実態も正確に把握してないガーランドがよく言う。調停の船など一撃で木端微塵にしてやろう。その前にヴィザーツと怠惰なアナザーアメリカンに鉄槌を下してもやろう、じわじわとな」
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