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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第9章「飛翔」

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第9章「飛翔」38 いつか使われる戦艦

女王は首を振った。
「人間はそう簡単には変われぬもの。ゆえに満たされぬ空白を玄街の考えで埋めようとする者が、いつの時代にもいた。
玄街は調停による不利益を恨んだアナザーアメリカンやヴィザーツの不満分子、暗黒の淵に憑りつかれた者たちの拠り所となった。それはアナザーアメリカンの暗黒街に似てはいるが、非なる集合体だ。玄街がその哲学と行動を捨てぬ限り、彼らはテロリストである。我々との対話を拒否し、歪んだ理想に殉じるテロリストだ」
「テロリスト…」
「玄街は大きな拠点を築きつつあるというのが情報部の見解だ。いっそ好都合だ。今までは末端の組織を叩くしかなかったが、拠点の特定は首領捕縛を可能にするだろう」
カレナードは訊いた。
「なぜそれをアナザーアメリカンには黙っているのです。ヴィザーツがずっと玄街と戦ってきたと知れば、アナザーアメリカンも一緒に…」
そこまで言ってはっとした。
「一緒に戦えば…」
「そうなれば、アナザーアメリカンは闘争本能に目覚め、玄街の望む姿に近づくだろう。
各領国府や領主家の代替わりでさえ、激しい権力闘争のために流血を伴うことがある。
現在、領国府警備隊と警察庁はヴィザーツ屋敷と協力関係にある。彼らは箝口命令をよく守ってくれる。玄街に関する情報統制は人心を無駄に乱さないための特別措置と知っているのだ。
ゆえにヴィザーツの本分は調停機関と玄街殲滅の軍事機関を兼ね備えた役割にある。
ガーランドはトルチフ大火後の百年に第三と第四の甲板を設けた。そして、ガーランドは二百年をかけて母艦と五隻の強襲戦艦と三十隻の輸送艦と支援艦からなる集合体に改造されていった。玄街がいくら我らに楯突こうと無駄と知らしめるためにな…。多機能飛行艇七十艇とトール・スピリッツ十五機が揃ったのが百年前。トール練習機を加えたのが八十年前だ。
現在、新型トール十機と特型飛行艇五十を建造中だ」
まだ新参が知らない情報にカレナードは反応した。
「かつてない戦争になりますか」
「最悪の場合はそうなるだろう。グウィネス・ロゥには必ず死んでもらわねばならぬ。ヴィザーツの誰かが、彼女の息の根を止めるのだ」
「彼女は…どういう人物ですか。彼女はオルシニバレ市で僕を玄街に誘ったのです」
「そうだったな。あれは…」
マリラはグウィネスを「あれ」と呼んだ。
「あれは私と同じく長寿の女だ。少なくとも四百年は生きている」
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