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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第9章「飛翔」

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第9章「飛翔」37 玄街哲学

三日後の午前十時、カレナードは五回目の個人教授へと走った。歴史学講義の休講時にちょうどマリラの予定が空いていたのだ。
キリアンは見送った。
「昼飯はどうするんだ、カレナード」
「どうなるか分からない。午後のコード応用理論には間に合わせる」
キリアンは友の後ろ姿が見えなくなるまで立ちつくした。
「あいつ、浮かれてるんじゃないよな。何だ、胸騒ぎがする…」
小接見室に女官長とベルが控えていた。マリラは玄街の資料を手に待っていた。
「黒衣の集団が初めて記録に残されたのは、2112年。東西トルチフ領国の消滅から11年後の南ミセンキッタ領国、第二首都プルシェニィの連続殺人事件だ。その後、玄街は50年のうちにアナザーアメリカ全土で目撃されるようになった。彼らの記録はほとんど犯罪の記録だ。恐喝、詐欺、騒乱、誘拐、窃盗、殺人、さらに破壊的コードによる人的被害…」
カレナードはオルシニバレで自分の身に起こった瞬間を思い出した。
胸の内がざわめいた。
「玄街は何のためにガーランドを襲い、あなたに暗殺を仕掛け、調停の秩序を壊そうとするのですか」
「調停機関が無くなればアナザーアメリカはどうなるか、カレナード」
答えは分かっていたが、口にするにはためらわれた。
「暴争の禁忌が破られます。つまり…」
女王はうながした。
「つまり、どうなると」
「戦争が起こるでしょう。玄街はアナザーアメリカン同士を戦わせ、殺戮と破壊を生むのが目的なのですか」
「そのとおりだ。そして殺戮と破壊だけでないものが生まれると信じている」
カレナードは耳を疑った。
「何が…何が生まれるというのです。そんな信念があるのですか」
「戦争が新しい社会秩序と科学技術の進歩をもたらし、人の世は革新するというのが、玄街の哲学だ」
「戦争がなくても起動列車や飛行機が生まれているし、各領国は独自の政治システムを持っています。進歩とは何を指して進歩というのです」
女王は少々皮肉っぽく言った。
「グウィネス・ロゥは調停がアナザーアメリカンを怠惰にしたと考えている」
「怠惰…。僕は調停準備会の経験がありますが、怠惰であっては調停完了祭を迎えられません。生活を守らねばならないのですから必死でした」
「玄街はそうは考えない。生命の極限状態を経ることで人間は革新するというのだ。調停の世である限り、人は真に生命の充実を知らぬまま死んでいくだけだと」
「過激で…乱暴な考えです。僕はガーランド乗船に生死を賭けましたが革新しましたか、マリラさま」
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