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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第1章「禁忌破り」

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第1章「禁忌破り」33 カローニャ領国オーサ市

警備隊が呼ばれ、大騒ぎのあとでヤッカは懲罰用の鞭を取った。
「君は大人しく帰っているべきだった。二度と来るんじゃないぞ。」
彼はカレナードを鞭で10回打った。マヤルカは手を抜いたのか、1回だけだった。
ガーランドは夕暮れ前に出航した。取引に邪魔が入り面目丸潰れだと、納入業者は怒り狂っていたが、怒るだけ怒ると気が済んだのか、2人に声をかけた。
「テントたたむのを手伝ってくれ。すぐに下山するぞ。お前ら、ここで凍死したくないだろ、今夜から雪になりそうなんだよ。」
彼は2人を車に押し込み、残っているトラックを連ねて山を降りた。カレナードとマヤルカは麓の町で放免されたが、行くあてはなかった。
「なんて年越しだ…。いたたたた……。」
「私はあきらめないわよ。今からでもカローニャへ行くわ、あそこは暖かいわ。傷を治さなければね、カレナード。オーサ市でガーランドを待ち受けるのよ。さぁ、私につかまって。」
マヤルカはカレナードに肩を貸した。
「どう、私は力持ちになったでしょ。」
「さ、さすがはシェナンディ家の娘です。雄々しくていらっしゃる…。」
「他に言い方はないのかしら。」
大晦日の午後、2人はオーサ市にたどり着いた。海辺の都市は潮の香りの中、調停開始式を前に賑わっていた。マヤルカが手当をし、カレナードの傷は順調に回復した。
「私の腕がいいのよ。10回も打つなんてヤッカ隊長はひどい人ね。」
「向こうも仕事ですから、やる時はやりますよ。お嬢さんは、鞭のあとは残ってませんか。」
「マントの上から打たれたから、大したことないわ。あなたはシャツだけにされたでしょう。コルセットしてて本当に良かったわ。あれが破けるくらいひどかったのよ。」
「修理しますよ、調停開始式までまだ日があります。」
「だめよ、血が付いてるわ。」
「服の下だから問題ありませんよ。」
「そういうのは女として許しません。このさい体にぴったりなのを探すわ。今のは微妙にあってないのよ。」
オーサは有名な保養地で、海岸に沿って遊歩道や長期滞在用の宿が軒を連ねた。そこから沖に停泊中のガーランドが見えた。調停開始式は新年の11日で、それまでガーランドは補給を続けるようだった。毎朝、2人は海岸へ出た。
「野菜の次は魚ね。きっと物凄い冷凍倉庫があるのよ。浮き船にはどれくらいヴィザーツが乗ってるかしら。」
「大宮殿と周辺で見ただけでも警備兵と儀仗兵と…女王近侍…いろいろ合わせて200人以上。船全体ではもっと乗ってるでしょう。」
「そうよね、3000mもある船を操るんですもの。1000人いたって不思議じゃないわ。ところで、カレナード、今度はどうやるの。魚のコンテナに潜るのは、ほうれん草より難しいわ。」
「難しいことにかわりはないですから、正攻法で行きませんか。」
「どういうこと。」
「ヤッカ隊長です。彼は僕達を覚えているでしょう。加えて警備の長ですから、ただの兵士ではありません。僕達が追ってきた理由を考えてもらうのです。そう仕向けます。彼はオーサに上陸するはずです。」
「危ないこと考えてるのね。」
「怪我したときは頼みますよ、マヤルカ。」
「私の手に余るような怪我はしないで。学校では傷を縫うのがやっとだったから。それも5針までよ。」
オーサの調停開始式は大公会堂で盛大に行われる予定だった。開放的な海辺の町らしく、おおざっぱで派手にやるのが習わしなんだと、地元の漁師が陽気に教えてくれた。
大公会堂は漁港と保養海岸を分ける広い岬にあった。その前にはこれまた広い広場と公園と市の奥に通じる大通りが口をあけていた。
「これでは玄街は潜めない。警備はオルシニバレより手薄だ。」
カレナードはガーランド警備兵の制服と同じ色の服を古着屋で探した。それをマヤルカと懸命に仕立て直した。写真屋に行って準備を整えた。
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