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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第9章「飛翔」

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第9章「飛翔」34 動乱期の玉座

カレナードは数時間前の女王を思い出していた。彼女が語った玄街の源流ともいえるヴィザーツ内乱期のいきさつは凄まじいものだった。
「女王の座が血を流してまで守り抜かれたと、知りませんでした。ヴィザーツ歴史学講義ではそこまで踏み込まなかったんですよ」
ベルはまだ酔ってなかった。
「新参さんには刺激が強すぎるもの。女官候補生と情報部、ヴィザーツ屋敷の次官級以上の人間は知ることになるわ。
そもそもマイヨール先生はそこまで教える必要はないとお考えなのよ。創生歴1600年代から2100年代にかけて各領国ヴィザーツ屋敷の覇権争いが女王廃位を狙ったクーデターの背景にあったとか、各地の反抗やガーランド占拠を起こす元になったとか、かなりオブラートかけた授業だったはずよ」
「ええ。おもてでは調停機関を務めながら、うらでは富とコード技術を蓄積した屋敷群が優位な政治力を振るい、他の屋敷を支配下に置くようになると、ヴィザーツ律法に背いてヴィザーツの長の座を狙おうとまでしたというのは授業でやりました。でも、それが百回近くあったなんて…。浮き船の中で戦闘が繰り返されたというのが信じられません」
「マリラさまが言わなかったこともあるのよ。知りたいかしら」
新参は「お願いします」と言った。
「1677年の中部ミセンキッタ屋敷内乱、1755年のオスティア反乱、1901年ガーランド占拠事件、そして2006年と2099年にも…マリラさまは命を奪われたのよ」
「え…2006年は東部海岸諸領離反事件で、2099年はミセンキッタ以西動乱ですよね…。女王は生き脱ぎではなく、殺されたというのですか」
ベルはうなずいた。
「1677年は弾丸が胸を貫いた。1755年はドレスに含ませた毒薬が息を止め、1901年は捕えられ斬首された。2006年と2099年は刺客が忍び込んだわ。でも、あなたも知っているように、女王の遺骸はウーヴァが甦らせるんですもの。女王がその座を明け渡すのは、たった一夜だけ。反逆者たちはウーヴァの餌になるか、ガーランドから吊られるか、選ばなくてはならなかったそうよ」
カレナードの左手は無意識に唇に当てられていた。
「それは…女官長からのレクチャーですか」
「半分はね。あとの半分はマリラさまが話してお聞かせくださったの、寝物語にね」
カレナードの顔に僅かな赤みを認めてから、ベルは続けた。
「マリラさまは仰ったわ…『王座を我がものにした奴らが、甦った私に驚き、次には慌てふためき、さらに恐れおののくさまは滑稽としか言えぬ。ウーヴァは本来、ガーランドのどこにでも存在し出現もする。反逆の徒は私の後にウーヴァを見ていたのだろうよ。欲にすさんだ心根ではウーヴァの前でただのヒトでいられるのは不可能だ。彼らの大方はその血肉を大精霊に喰われたのだ。ガーランドにおいて、あれほどの阿鼻叫喚はなかった』と」
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