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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第9章「飛翔」

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第9章「飛翔」31 余波はどこまでも

ベルの唇の朱色が動いた。
「詳しく聞きたいでしょ。道化の弱みも、もっと教えてあげるわ。来週のご教授のあとでね。さ、着いたわよ」
エレベーターの扉が開き、見慣れた下層天蓋下の通りが目の前にあった。ベルはいつものように手を振ったが、それは罠のようだった。カレナードはベルの言葉から逃げるように走った。V班の部屋に戻るや、寝床にあおむけになった。キリアンが「お帰り」と言った。
「息が弾んでるぞ、カレナード」
「走りたかったんだ。放っておいてくれ」
キリアンは大きく息をするカレナードの胸を見おろした。いまや彼の目には、親友の姿はすっかり女性として映っていた。無造作に投げ出された腕と脚と無縁慮な返事にさえ、キリアンは女を見い出していた。
そうとは知らず、カレナードは制服のボタンを外しながら、つぶやいた。
「人って、いろいろあるんだな…。見かけによらないっていうか」
「たいがいの男も女もいろいろあるものさ。それが世の中ってものだろ」
キリアンの親友はぱらりと胸の帯を外した。カレナードの大きな溜息と共に胸の谷間がビスチェの縁で広がった。キリアンは自分の顔が赤くなっていくのを感じた。
「最近のお前は無防備だぞ。俺たちが男だって忘れているだろ。いや、自分が男の中にいる女だってことを忘れているんだ」
言ってから後悔した。カレナードはキリアンを睨んでから乱暴にカーテンを閉めた。
「僕は女じゃない!」
声は怒りに満ちていた。
キリアンが「悪かった」と言うまでの短い間に、カレナードはベルの話を聞いてやると決めていた。ベルが玄街ヴィザーツだったのなら、元に戻る鍵を見つけられるかもしれない。キリアンの気配がカーテンの向う側で揺れた。
「許してくれ、カレナード。お前は男だ」
「そうさ、僕は…」
いきなりカーテンが開いた。カレナードの露わな上半身がキリアンの目に飛び込んだ。
「これでも僕は男なんだ!そうだろ、キリアン!」
「ああ!カレナード・レブラントは男さ!」
カレナードの勢いにキリアンは肯定するしかなかった。彼はカレナードの胸の膨らみを凝視したまま、自分の入り組んだ欲望に嘘をついた。
「女だ、俺は女のカレナードを欲している!」
そこへ皆が帰ってきた。アレクは急いでドアを閉めた。
「何やってんだ、カレナード。他班の連中に示しがつかないぞ」
シャルは明るく釘を刺した。
「キリアン君、進級試験の前に下船処分になっても、俺、知らねえよ」
ヤルヴィは枕を持って来て、カレナードの体を隠しながらキリアンをからかった。「レー家の男は助平だ」
その率直さがカレナードに刺さった。彼は自分の油断をかえりみた。
「僕は皆に甘えすぎたようだ。この部屋なら体を晒してもいいとタカをくくっていた…。さっきはキリアンを驚かせてしまった…」
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