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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第9章「飛翔」

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第9章「飛翔」30 女官専用エレベーター

宵の口としては遅い時刻になった。カレナードは接見室を辞するさい、ベル・チャンダルに同伴を頼んだ。
「かまいませんよね、ジーナさん。話があるんです」
女官長は紋章人と元玄街間諜を一瞥した。
「いいでしょう。チャンダル女官は下層天蓋層まで行ってきなさい」
ベルは生け垣の茂みに隠れた女官専用エレベーターを使った。箱の壁は青い蔓草模様で飾られていた。
「他人に聞かれたくない話ね」
「この前、ワイズ・フールがエレベーターに潜んでいたのです。それをご存知でしたか」
「何ですって」
「あの時エレベーターにはあなた一人だったのですか」
「そうよ。私は箱から出て、あなたが入るまで待っていたわ。フールがいるなら気づかないはずがない。そうね、ずっと走ってくるあなたしか見ていなかったから、フールが空きっぱなしの扉から忍び込むのを見逃したのかもしれない…。彼は何をしたの」
「箱の中がトリモチだらけになりました」
「なんてこと。清拭コードじゃ追いつかないわ。あなた、酷い目に遭ったの」
カレナードは少しおどけてみせた。
「『窮鼠、猫を噛む』をやったので、道化もトリモチだらけに」
ベルは少し笑ったが、すぐに女官の顔になった。
「マリラさまがお灸をすえたのに…馬鹿なフール。で、もし私がフールの共謀者なら、仕返しするつもりだったの」
「ベルさんに僕に嫌がらせする動機があるとは思いません。道化の弱点を教えて下さい。はったりで彼にカマかけたら、すごく慌ててた。彼の弱みを握っておかなくては」
ベルは穴があくほどカレナードを見詰めた。
「あなたって…度胸があるか無鉄砲なのか、それとも大馬鹿なの。フールを相手にするなんて」
「ご教授のたびに嫌がらせを続けられるとなれば、泣き寝入りは彼の思う壷です」
「マリラさまに申し上げるべきだわ」
「お灸が効いてませんでした」
「それでも女王の御耳には入れておくのよ。いいわ、教えるわ。フールはウーヴァが怖いの。以前に喰われかけたらしくて。そういえば、あなたもウーヴァに会ったでしょうに。怖ろしくはなかったの」
「怖ろしいのはウーヴァよりマリラさまです」
ベルは急にいいようのない感情が湧き上がるのを覚えた。
「あなたって…不思議な人。それほど怖ろしい方に言い寄って振られたのに、こうして教えを受けているのよね…平然として当然のように。なぜそんな事が出来るの」
「そう言われても…自分にはよく分かりません」
「そうでしょうね。私ね、ガーランドに乗る前は玄街にいたのよ」
ベルは自分が何を言ったか知っており、カレナードはベルが何を言っているのか、分からなかった。
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