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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第9章「飛翔」

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第9章「飛翔」29 矛盾と現実

マリラは紋章人にサンドイッチをすすめ、メモに目を通した。盛られたサンドイッチは次第に無くなり、教授が終わる頃には追加の茶と果物が運ばれた。
カレナードの食べっぷりを眺めていたマリラはどことなくホッとしていた。小ミセンキッタ時代の話はサンドイッチと共に彼の腑に落ちたと感じ、教師役の緊張がほぐれたのかも知れなかった。彼女は訊いた。
「ガーランドにはすっかり慣れたか」
カレナードはうなずいた。
「友人がいますし、学ぶこともたくさんあります。恵まれています」
彼は改めて女王に一礼した。彼女はさらに訊いた。
「ガーランドそのものについて問いがあれば、答えよう」
「機会をいただき、ありがとうございます。ヴィザーツ屋敷とガーランドが調停機関と軍事機関を両立させていることが…ここに身を置いていてもまだ不思議でなりません」
「こればかりは腑に落ちぬか」
「はい」
ジーナ女官長はかすかに肩をすくませ、アライアとイアカは「ま、今更」と思いながら扉の近くに並んでいた。ベル・チャンダルだけが「マリラさまのお答えを」と耳を澄ませた。
女王は茶碗の湯気をふっと吹いた。
「マイヨールが言わなかったか。ガーランドが飛ぶだけでアナザーアメリカンには暴争への抑止力となり、玄街には実際の武力として行使するためにあると。
創世期の悲惨が出生率にあったとすれば、古領の悲惨は出生率と戦禍が重なっていた。ゆえにアナザーアメリカンはガーランドを軍事機関と認め、畏れもした。
武力を持った調停機関。それがガーランドの現実だ。すでに我々は玄街と戦う軍事機関になっている。各領国の警察隊は玄街を追い払うだけだが、今後のガーランドとヴィザーツ屋敷は玄街を潰す役目を担う。
玄街については、そなたに話さねばな。これもガーランドの歴史の一部だ。玄街は我々の中から始まったのだ」
ベルはひそかに動揺し、カレナードは驚いていた。
「ヴィザーツが分裂した…ということですか」
ベルが身を乗り出していた。その様子を女官長は「玄街の間諜だった女」という目で眺めた。
「領国間に調停が絶えないように、ヴィザーツの中でも調停すべき事象が起こるのは当然だ。なにしろ人間は足りなければ欲し、足りればさらに欲す存在だ。ヴィザーツにも長い歴史と勢力を誇る氏族はあちらこちらにあるのだ。それらが女王に取って代わろうとしたこともあれば、過激な思想にたどり着いた者たちがガーランドに反逆したこともあった。それが玄街の源流だ。続きは次の土曜にしよう」
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