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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第9章「飛翔」

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第9章「飛翔」27 逆襲

狭い箱の中で格闘が始まった。下層天蓋層に着くまで、直行とはいえ四分ほどの時間がある。カレナードは道化のトリモチ団子容器を奪おうと相手の懐に飛び込んだ。予想外の反撃に、道化はたじろいだ。カレナードはすでにトリモチの付いていた左の手のひらを道化の喉仏に押し当てた。べっとりした感触と痛みに道化は呻いていた。カレナードはなりふり構っていなかった。団子の容器から一本のトリモチ棒を手に、道化に馬乗りになった。
「あなたに教えていただいた解剖理論では、腰の両側のこの筋を締め付けると良かったんですよね!」
「痛い、痛い!でも女のケツが乗っかっていると思えば極楽なりや!」
カレナードは容赦しないと決めた。
「このトリモチで鼻と口をふさぐと死にますよね!」
「ひい!止め、止め、止めえええ!」
「目にくっつけるとどうなるか試しましょうかね!」
「冗談、冗談、冗談はよし子さん!」
この期に及んでだじゃれを飛ばす道化の神経はどうかしてると、カレナードの怒りが堰を切った。彼はトリモチを道化の右手と左手になすりつけ、それらを彼の額にくっつけた。
「あぎーーーっ!」
道化の悲鳴をよそに彼は続けた。もがいている道化の腰に残りのトリモチをつけて床にぐいぐい押しつけた。道化は自由になった脚をばたつかせたが、蜘蛛の糸ならぬトリモチが彼をエレベーターの囚人にしていた。
カレナードの左腕は痺れかかっていたが、おくびにも出さずに脅し文句を並べた。
「あなたが女王直属の遊撃部隊なら、僕だって直属の紋章人です。あなたの弱点を知らないとでもお思いですか。教授の帰り道で待ち伏せを続けるおつもりなら、こっちにも考えがあります。マリラさまに愛想を尽かされることになっても知りませんよ!」
「しょ、小生の弱点!な、何をッ!紋章人ッ、何を知ってるんですッ!」
「下層天蓋層に着いたようです。失礼します、ワイズ・フール」
エレベーターが止まり、待っていたヴィザーツたちは少々驚いたが、カレナードは「遊んであげていたのです」と、箱の中へと顎をしゃくった。破顔一笑が起こった。
「やるじゃないか、紋章人」と一人が言った。「トリモチは食堂でオリーブ油もらって揉みだすといいぞ。それから洗剤でよく洗え」
道化が叫んだ。
「小生にも油をプリーズでござるよ!でないとエレベーターが小生のトイレに早変わり!あなた方、雪隠詰めになりますよ!」
他のヴィザーツがからかっていた。
「この箱は第五層船倉直行なんだ。船底へ行くまで我慢してろ」「めったに拝めないワイズ・フールのいい格好だからな」
「キエェェーーッッ!あんたら!せめてオムツを!」
エレベーターは道化だけを乗せて降りていった。
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