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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第9章「飛翔」

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第9章「飛翔」26 エレベーターの蜘蛛男

カレナードは知らなかった。女王は告げた。
「小ミセンキッタ時代で38歳だ。50歳を越えて生きる者は少なかった。それはヴィザーツも同じこと。
人生を何に捧げるか。ヴィザーツの道を選んだ者は大いなる目的のために生きた。そのような集団だからこそ代々に渡り、教育方法を考え、組織の刷新を行い、調停の重要性を説きつづけた。
よくぞ2000年の長きを支えて来たものよ。私はヴィザーツの生を全うした名も無き者たちを想う。彼らと彼女たちこそ、偉大な者たちだ。
私はアナザーアメリカの未来のためにまだやらねばならないことがある」
ベル・チャンダルがそうだったように、カレナードもマリラの永き情熱の煌めきに心を奪われた。
過去を語りながらも、次の時代への尽きぬ想いが光りを放っていた。
その日、カレナードは今までで一番美しいマリラを見たのだった。
彼は女王の灰色の瞳を宝石のように覗き込んでいた。女王は卓の向こうから左手を紋章人の鎖骨あたりまで伸ばした。
「ナイフはここにあるのか」
カレナードは緊張を取り戻した。
「忘れてはおりません、マリラさま」
「ならば良い。次回は今週の土曜にしたいが、そなた、施療棟の方はどうなっている」
「隔週ごとに診てもらっています。土曜は午後六時にバハ医師と会う予定です」
「では、そのあと、ここで夕食をとりながら小ミセンキッタ時代の詳細をやるとしよう。質問を揃えて来るように」
女王の言葉を聞きながら、女官長は週末に女官が総動員になってもいいよう、スケジュールに少々の変更を決めた。
「大丈夫よ、紋章人はしっかりしてきたし、マリラさまも教えに徹しておられるのだから。二の月のような不安要素も特にないわ」
接見室を出たカレナードの足取りはどちらかと言えば軽かった。が、エントランスの衛兵に会釈を返すや、前方を睨んでいた。エレベーターまでの木立の中にワイズ・フールが待ち伏せしていても不思議ではない。
ちょうど一基のエレベーターが止まり、箱からはベル・チャンダルが降りた。彼女はカレナードに手を振った。
「下層天蓋層まで直行よ」
カレナードは走った。ベルは彼の背中を押した。
動き出したエレベーターはがらんとしていた。ふと影を感じて見上げると、天井にワイズ・フールが張り付いていた。彼は「ケエエ~~ッ!」と叫び、紋章人めがけて何か投げた。鈍い音がして粘液状の物体がカレナードのいた場所に貼り付いた。道化は飛び降りた。
「小生、今は蜘蛛男なりっ。ケェッ!下層天蓋層に着くまで小生と遊んでくだされ、それ!トリモチでござるよ」
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