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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第9章「飛翔」

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第9章「飛翔」25 ガーランドを率いるならば

カレナードは食堂でのキリアンの話はかいつまみ過ぎだったと知った。彼はわざとそうしたのかもしれないが。
「貴女がアナザーアメリカの王だったことも、法整備を主導したことも、知りませんでした」
マリラは薄く笑ったかに見えた。
「自らが統治すれば、ことは簡単だったと思うか。カレナード、そなたが浮き船を率いる立場ならどうする」
カレナードは息を飲んだ。なんという問いだろう。
「そなたは考えたことがないだろう。しかし、訓練生は将来をガーランドに捧げる身ならば、考えておかねばならぬ。そなたが数十年のちの艦長でないと誰がいい切れるのだ」
「答えるには未熟者ですが」
「かまわぬ、考えを述べよ」
「貴女は調停によって影のようにアナザーアメリカを統治した。その方が…いえ、貴女はそうせざるを得なかったのです。ガーランド女王であり続けるためです…生き脱ぎをなさり、戦禍を遠ざける象徴であり続けることを選んだのでは」
その時、マリラの上に影のようなものが揺らめいた。瞬時にそれはマリラにとけ込み、くっきりと女王の姿だけが残った。カレナードの答えを肯定する揺らぎだった。
マリラは話を再開した。
「私はアナザーアメリカ王の座を退き、後をアナザーアメリカンに委ねた。そしてすぐに小ミセンキッタ領が成立した。歴史区分でいう小ミセンキッタ時代だ。
ここに至る空白の数十年こそ、智恵を絞り、必死でアナザーアメリカの秩序の元を模索した時代だった。
その間に浮き船はアナザーアメリカンと数々の契約を交わした。
契約に曰く、
『領、ないし領国成立にはマリラ・ヴォーの承認が不可欠であり、女王は領政府の内政には一切干渉せぬが、領政府同士の争議には調停を以て深く干渉せねばならない。
また、ヴィザーツ屋敷と助産所なしに自治領および自治領国を発足させてはならない。
この条項は絶対である。破られた場合、その領政府は子々孫々の営みを放棄するものとみなす』
この条文は今も各領国の建国起源文書の最初に刻まれている」
それから女王はヴィザーツ律法について語った。
「ヴィザーツ独自の戒律を受け入れ、アナザーアメリカンより制約の多い生き方を選ぶ大勢の人間がいた。それに見合う特権、つまりコードの恩恵はヴィザーツのものになった。が、コードだけが理由ではない。
ヴィザーツの道を選んだアナザーアメリカンは調停の力を信じ、調停制度確立に賭けた者だった。
そなた、当時の平均寿命を知っているか」
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