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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第9章「飛翔」

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第9章「飛翔」23 現実に、子孫たちは

今度はホーンが答えた。
「いや。その後30年、古領群は衰退に抵抗したんだ。
悲惨だったろうな。子供はほとんど育たないわ、正しい誕生呪が受け継がれた土地を探して領を去る者は増えるわ、もはやテネに戦争を仕掛けるどころじゃない。無政府状態に陥りつつ、体制を立て直す試みだけは続けたのさ。絶望的な試みを。
アナザーアメリカンは創世期の混乱と惨状を再び味わったのさ」
カレナードがつぶやいた。
「そのことだけど、さっきワイズ・フールが古領の赤ん坊を見殺しにした女王は軽蔑に値しないかと言ったんだ。皆はどう考える」
ミシコは割り切った答えを用意していた。
「2000年前だぞ。今の価値観と倫理で測れるものじゃない。僕は当時の女王もヴィザーツも軽蔑しないさ。悲しいことには違いないけどな」
シャルは「非情なものさ」とだけ言った。10人ほどがあれこれ言ったあとで、ヤルヴィが現在と将来に向けた問題に触れた。
「ガーランドが玄街と戦争して、もし玄街に子供がいたらどうするの。殺しちゃうの」
ホーンは訊きかえした。
「玄街の子供だって!いるかな…子供…」
サナールは自分の考えを言った。
「いるだろうな。強化訓練の間、僕は管制部にいて毎日大山嶺探索にかかわっていた。
玄街ヴィザーツが大きな組織なのは間違いない。拠点があるのも間違いない。そうでなければ参謀室長が探索に同意するわけがない。
だからさ、一つの都市で育つくらいの数の子供がいても不思議じゃない。
ま、その子供たちがガーランド・ヴィザーツの敵になると考えるなら対策は必要だ」
ヤルヴィが「やっぱり殺すんだ」とおちょぼ口をすぼませた。
サナールは人差し指を振った。
「それで解決するのが一番簡単だとは言わないぞ。教育の力ってものを考えてくれ。ガーランドが調停制度をアナザーアメリカに根付かせたのはひとえに教育の力だったと俺は確信している」
ミシコが立ち上がった。
「カレナード。お前、その辺はマリラさまに直伝してもらえ。俺たちはもうスコラで学んだからな。調停機関が成立するまでの概要を教えておくから、あとは紋章人の名に恥じないように女王のご教授を受けてこい」
キリアンが手を挙げた。
「では、小ミセンキッタ直系の子孫である俺が調停機関の誕生を語らせてもらおうか。かいつまんでな」
拍手が起こり、彼は訓練生の中央に立った。
自分がカレナードに出来ることなら何でもしてやりたいという密かな想いとともに。
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