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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第1章「禁忌破り」

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第1章「禁忌破り」31 塩漬けキャベツの隙間

ダナンは数年前に買ったトラックで運送業を始めていた。
「年末にも大きな仕事があるんだ。大きな声じゃ言えないが、相手は調停の船だ。」
カレナードはダナンに事情を打ち明けた。彼は取引の場所まで連れていくと約束してくれた。
新年の2日前、トラックに塩漬けキャベツのコンテナを満載し、隙間にカレナードとマヤルカを隠して出発した。老人は最後までレブラントの娘と言い続け、別れを惜しんだ。
トラックを見送ってティティーヌは義父をからかった。
「レブラントさんの息子だって分かって踊ったらしたでしょ。」
「いやいや、あれは娘だよ。男の恰好しても娘だよ。」
「お義父さま、色ボケないでくださいまし。」
「ほっほっ、いい冬至じゃったのう。」
キャベツ箱の間の2人に、ダナンは言った。
「取引場所に着いたら、まずオレはまとめ役の所へ挨拶に行く。そのあとでキャベツを降ろす。お前たちがトラックを降りられるのはその間だけだ。関係者以外は立ち入り禁止だからな。見つかってもオレは助けてやれない。
玄街の不幸に負けないくらいの運をつかむんだぞ。」
ダナンもガーランドがどこに停泊しているのか知らなかった。トラックは案内人を助手席に乗せて、山道を3時間走った。ガーランドは冬空を切り裂くが如く、山中の牧草地に停泊していた。すでに多数のトラックが並び、冬野菜が大量に積み込まれていた。2人は静かに荷台を降り、納入業者達のテントと車の列から離れた。マヤルカは素早く台数を数えた。
「100台近いわ。相当の量を積み込むわね。時間がかかるんじゃないかしら。…カレナード、私達がガーランドに乗れたとして、問答無用で殺されやしないわよね。」
「それはないですよ、ガーランド・ヴィザーツは玄街の仕業について知りたがるはずです。僕達の体にあるはずの玄街の情報…ヴィザーツの言葉で言うとコードだと思うけど、それを調べるんじゃないかな。それにヴィザーツ屋敷で感じたのは…彼らも人間だということです。」
「そうね、でもヴィザーツにもいろんなのがいるわよ、きっと。」
「でしょうね。」
容易くはない前途なのは分かっていたが、それは2人の想像以上だった。
余分の荷物を潅木の茂みに隠し、トラックの群れを迂回して、ガーランドに近づいた。野菜の搬入のために船底から大きなゴンドラが幾つも降りていた。その場所は調停完了祭で乗った昇降口から800mうしろに離れていた。
「密航開始だ、マヤルカ。」
緩やかな流線型を描く船底に沿って進んだ。マヤルカがつぶやいた。
「なんて大きさなの、圧倒されるわ。」
高原の牧草地の起伏の激しい所では船底がはるか頭上に遠のいたが、見覚えのある昇降口のマークを見つけた。2人は外側の開閉装置を確かめ、完了祭でガーランド警備兵がやったようにそれを操ってみたが、アナザーアメリカンの手には余った。
「手を上げろ。キャベツ臭いアナザーアメリカン。」
振り向くと、完了祭で見たのと同じトルコブルーとパールホワイトの制服を着た4人の警備兵がいた。後ろから銃口が狙っていた。
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