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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第9章「飛翔」

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第9章「飛翔」16 晩夏

道化がうなだれて去ったあと、女王は接見室の小机に積んだ史料に目を落とした。
「ワイズ・フールめ、当分は大人しくしておろう。あれの面倒を見るのも女王の義務である。そして、紋章人。彼の質問にどこから答えるか…」
『ガーランド前史』を開いた。彼女はそれを懐かしく読んだ。
「ああ、私自身が忘れかけていた…。
この浮き船がガーランドと呼ばれる前の、アナザーアメリカンとヴィザーツに明確な区別が出来る前の、素朴にして混沌、哀切の祈りに満ちた最初の数十年…。
続く200年余、船主であった私がヴィザーツの王となり、アナザーアメリカの古領に調停の道を示した時期。
夥しい失敗と動乱の連続。
アナザーアメリカンとヴィザーツが完全に分かれ、それぞれの役目を担うことで先へと進めたのだ。アナザーアメリカンは地上の幸福と調和を求め、ヴィザーツは調停をなし、コードの秘密を解く。
そうでなければ、サージ・ウォールの内側で野蛮な行いの果てを見ることになっただろう。
紋章人は古い歴史の何に心を動かされるだろうか…」
カレナードは金曜の講義が終わると、飛ぶように女王区画に向かった。
その真っ直ぐに伸びた後ろ姿は、V班の仲間には輝いてみえた。
キリアンの心中はいささか複雑だった。
「紋章人の役目か…。そんなに急いでどこへ行こうというんだ、カレナード」
ヤルヴィも同じ気持ちでカレナードを見送った。
「遠くへ行ってしまう…」
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