挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第9章「飛翔」

338/388

第9章「飛翔」15 生殺の拳

マリラの叱責が道化を襲った。
「ガーランドに居場所を与えた意味を忘れたか!言うてみよ、そなたの性根が曲がってなければ言えるはずだ!」
道化は真っ青になった。
彼はこのところ調子に乗り過ぎた自分を恨んだ。それ以上に紋章人への恨みが湧き上がるのを覚えた。
性根はどうしようもなく曲がっていた。
女王直属独立遊撃隊の中でも特別な位置にいて、女王の命令のみで動く立場をカレナード・レブラントに奪われるのではないかと怖れていた。女王の女心ほど予測不能なものはないと、道化はよく知っていた。
が、マリラの前では平伏し「あわわわわ」とかしこまるのは忘れなかった。
「女王陛下に申し上げます。小生、本来は処刑されるべきところを貴女さまに生かされた身でございますれば、ガーランド女王に誠心誠意を尽くす以外に道がありましょうや」
「忘れてはおらぬようだな、一時は玄街に心奪われ破壊工作員にまでなった罪を」
道化は床に這いつくばった。
「どうか、それを仰いますな。己を恥じてございます。身の置きようがないとはこの事…」
「やかましいわ、ワイズ・フール。たまには思い出させてやらねばならぬ。そなたの好き勝手を黙って見過ごすほど私が甘いと考えたのか。舐められたものだな」
「ご、誤解でございます。マリラ女王。小生の性根はそこまで曲がっておりませぬ」
女王は一喝した。
「嘘つきめ!ウーヴァの餌にしてくれるわ!」
道化は完全に虚を突かれた。女王の腕が彼の衣装を掴み、物凄い力で引きずった。彼は悲鳴を上げた。
「女王さま、お、お助けを。どうかお助け下され。ウーヴァだけは、ウーヴァだけは、勘弁して下され。喰われるのは殺生でございまする。ひいいいい!」
女官たちは女王と同じく冷たい眼差しで彼が引きずられるのを見ていた。必死の道化はマリラの手を振りほどきざま、足技を放った。マリラはそれを左腕一本で受け止めた。
「本性を現したか、名無しのヴィザーツ」
「な…名無しにしたのは女王陛下ではございませんか。小生、生涯をマリラさまに捧げたのでございますよ!」
「だからといって、見返りを求めてはならぬ。それがそなたへの罰と、まだ分からぬか」
道化は足を引っ込めたが、かわりに拳を見舞った。マリラは軽く受け流し、道化の懐に一撃を放った。
「うぎッッッ!」
咄嗟に後退して衝撃を殺したが、道化は執務室の端まで転がった。形相が変わっていた。女王の淡いグレーの執務用スーツから闘気の波動が揺らめいた。
「この際、そなたには拳で悟ってもらおうか!!!」
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ