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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第9章「飛翔」

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第9章「飛翔」14 道化、叱責される

エーリフの髭の剃り跡が逞しく動いた。
「ほほう!紋章人さえ拒まれたか。なるほど。が、私人のマリラさまの御心がいつまた動くとも限らないと…。違いますかな、ジーナ殿」
ジーナは語った。
「マリラさまが生き脱ぎで私人の記憶を捨てるのは当然のこととして、注意を払っていなかったのです。でも、抑え難い感情に苦しむお姿が尋常でなく、長くお傍にいて初めてのことでしたので…ずっと気になっておりました。
私はやっと気づきました。私人のマリラさまは不安定なのです」
「女官長殿、それは私も折に触れ感じますよ。しかし、女王がご自身の問題で我々に助けを求めるでしょうか」
ジーナはあまり期待せずに訊いた。
「前例はありませんの」
「私が知る限りではありませんな」
2人はしばし沈黙した。エーリフが訊いた。
「紋章人の教授はどう進めるおつもりなのかな」
「全部で六回の講義を計画されましたわ。1回につき1時間から90分ほどの予定で」
「なるほど。進捗のほどを私に教えてくれませんか」
「なぜです」
「ヨデラハンが進級試験の前に特別講義を組む。その時に紋章人が退屈しないように、そしてヴィザーツに生まれた新参達が真のヴィザーツになれるようにしてやるのですよ」
「熱心なお方ですね、あなたは」
「あなたこそ、女官を束ねるご苦労に加え、女王を良く支えておられる。今夜は話相手に選んでいただき、恐悦至極でありますよ」
ジーナはいつになく明るく微笑みを返した。
「そろそろ次の女官長候補を立てて育てようと思いますの」
「引退して私の隣に居て下さるというのはいかがです」
「ふ、ふふふ、艦長、からかうのはおよしなさいませ。酔いが回りそうですわ」
エーリフはカウンターのスティレに追加の酒を注文した。彼は成行きを見守っていたが、ジーナが酔い潰れることなどなかった。
ワイズ・フールが釈放されたのはその翌日だった。
彼もまた告白文を書いた。文面は「道化の仕事は悪戯の形を借りたガーランド乗員への注意喚起であり、悪意から出たモノではない。拘束は不当であり、艦長と女王の狭量な処置に断固抗議する、云々」と徹底した天邪鬼だった。
彼はわざと派手な衣装を着てマリラの前に現れた。
「こーれはこれは女王陛下。ワイズ・フール、ただいま帰還いたし候。聞けば紋章人にご教授なされるとか。小生、彼を羨みまするでございまする」
「ワイズ・フール!そなたにはすでにご教授しておるわ!忘れたか!」
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