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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第9章「飛翔」

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第9章「飛翔」13 艦長、誘われる

恋心を禁じている女と恋心から遠ざかった女が互いの中に何を発見したのか、傍らのベル・チャンダルには分からなかった。
女王と女官長は苦笑いし、女王は穏やかに言った。
「私は紋章人の恋心など問題にしてはおらぬよ。彼が前向きなら女王も応えねば。彼が私に全てを捧げた身だからといって、私が受取ってばかりでは片手落ちではないか」
「もし紋章人が再び戯言に及ぶとなれば、どういたします」
「そのときは教授は打ち切ると脅すのだよ。さあ、蔵書室を開けておくれ。教える側こそ怠りなく用意が要る」
ベルはインクの香りがする部屋の灯りを点けた。すぐにマリラが来て『ガーランド前史』と『アナザーアメリカ古領群』を手に取った。彼女は他にも数冊抜き取った。それらを受け取りながら、ベルは自分の嫉妬心が朽ち果てるよう祈った。
一方、ジーナはマリラに押し切られた心配をエーリフ艦長に打ち明けた。女の勘がどうしても騒ぐのだ。
女官長と艦長が非番の日に、兵站部右舷大ホールの映画会で会ったのは偶然だった。
彼女はエーリフを誘った。上映の後、兵站部直営セクションの酒保で2人はグラスを傾けた。カウンターの中では、兵站の寄生虫ことスティレ・ピケが聞かないふりをして聞いていた。
「では、エーリフ艦長殿は大船に乗ったつもりで良いというのですね」
「安心なさい、マダム・ロロブリダ。紋章人は目の前のことにはたいへんな集中力を注ぐタイプだ。恋に狂う時はもっぱら恋に、踊り狂う時にはもっぱら踊りに。そして、今は知的好奇心を満たすことに没頭したいのだ。
今年の新参カリキュラムは変更が相次いだために、ヨデラハン参謀の玄街関連講義が全部後回しになってしまった。レブラント訓練生がヴィザーツの存在意義を問いたくなっても不思議ではない」
「彼は案外難しい子ですわね。ああ、いえ、単純なところもございますけどね」
エーリフはプッと吹き出した。
「難しいから仕込み甲斐がある。彼は磨けば玉になる人材です。女王が鍛えて下さるなら好都合」
「私が申し上げたいのは、マリラさまが私人の顔で彼に接しないかということです!」
ジーナの酔いと剣幕が混ざった口調にエーリフは少々面食らった。
「ジーナ殿がこれほど気に病むとは、何があったのです」
「ポルトバスク代役作戦のあと、紋章人の件で相当に苦しまれたのです」
「トペンプーラから聞きましたが、それは半年も前のこと」
「んもう!あの男は!ああ、失礼しましたわ、艦長。それで、つい先日、マリラさまは、恋心を吐露した紋章人に拒絶のナイフを与えたばかりなのですわ」
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