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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第9章「飛翔」

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第9章「飛翔」9 罪科の重さ

ムザヤトマ市の調停完了式まで浮き船は補給を続けた。ようやく海からの熱い風が止んだ日、新参訓練生はハーリ・ソルゼニン事件の詳細とハーリの処分を知らされた。エーリフ艦長は大講義室に集まった若者たちに噛んで含めるように告げた。
「ハーリ・ソルゼニンを下船処分とし、身柄はいずれかの外れのヴィザーツ屋敷預かりとする。地上において長期懲罰を受けることになるだろう。下船は二日後だ。面会したい者は早めに申し出ておけ」
彼はカレナードに手紙を渡した。ハーリからの手紙だった。封を解いた彼の周りに人垣が出来た。皆がハーリの文面を聞きたがった。カレナードは読んだ。
『カレナード・レブラントへ。
君の命を奪おうとした僕を許してくれるだろうか。許されるとは思っていない。ガーランドを降りる前にもう一度会いたい。君の顔が見たい』
ホーンが言った。
「新参を代表して俺はヤツに会うつもりだが、一緒に行く者がいるか」
ミシコとナサール、そしてリンザ・レクトーが手を挙げた。リンザは腕をさすった。
「とりあえず罵倒していいかしら。私にはその権利があるわ。あるはずよね、ホーン・ブロイスガー」
ホーンはニヤリとした。
「いくらでもやってくれ。ヤツには覚えていてもらわなくちゃな、自分の罪科ってものを。同じ訓練生を撃ったことを」
罪科。
カレナードは思い出していた。命令違反の罪科が彼に何をもたらしたか。
彼と比べるべくもない大きな罪を犯したハーリには何が訪れるだろう。彼に銃口を向けられた恐怖はまだ残っていた。が、カレナードは会おうと決めた。
すぐに艦長の許可がおりた。
施療用監房から面会室に現れたハーリは白い拘束服を着ていた。右手には包帯が巻かれていた。大宮殿で見せた狂気のかわりに、静かな諦念がハーリに宿っていた。
監視員は拘束服の背中に付けたロープを引いたまま、柱の陰に退いた。ハーリはぽつりと言った。
「みんなは…どうしているんだい」
「ハーリ、僕の顔を見たいと手紙に書いたなら、こっちを見てくれ。みんなは遅れている講義を必死でやってるよ。進級試験まで2ヶ月だ」
ハーリは顔を上げた。
「僕はもう試験を受けることはない。…僕は…君に謝らなくては。謝ってすむことではない罪だけど…。君は僕が手すりに乗った時…ミーナさんの話をして止めてくれた。君を殺そうとしたのに…なぜ…」
それはカレナードにもよく分からなかった。
「咄嗟のことだったから、なぜなんて考えもしなかった。人が死ぬのは嫌だ、もちろん自分が死ぬのも。ハーリ」
しばらくの沈黙の後でハーリは問うた。
「ぼ…僕を許してくれるかい。でも、カレナードがそうしたくないなら、それでいいんだ。僕の罪は償い切れないくらい大きいんだ…」
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