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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第9章「飛翔」

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第9章「飛翔」8 ベル・チャンダルの孤独

ベルの佇まいは完全に大人で軍人だったが、以前にはない謎めいた雰囲気が加わっていた。夏至祭の頃より細く見えた。
「ベルさん、病気だったのですか」
「どうして」
「少し痩せたと思って。それに女王区画で見かけませんでしたから…」
ベルは嘘を言った。
「夏至祭のあと、一ヶ月ほど地上に出張していたの。心配無用よ、でも、ありがとう」
彼女はカレナードを振り返らずに自分の小さなアパルトマンへの道を歩いたが、心は過去を振り返っていた。
玄街の諜報員として育ち、女官候補生となってガーランドに搭乗した事。マリラの閨を温めた数年間。
「誰が女王と私のただの戯れ事をカレナードに教えたのかしら…。いえ、知ったところで余計な感情が湧くだけよ。
今の私はあの子と同じかもしれない、気持ちが揺れていて危なっかしい…。
トペンプーラはまだ私の身辺に気を許してないはず…。玄街の間諜だった女ですもの」
自室に入り、彼女は結い上げた髪をほどいた。
「可笑しい…。今頃になってカレナードをもっと困らせたくなるなんて…。私が玄街出身と知ったら、あの子は何て言うかしらね」
彼に秘密を明かしたい衝動があった。
玄街コードに体を侵されたカレナードと玄街で育った自分の間に不可解な親和性を求めているのだ。
「手前勝手なことを考えて!どうしたの、ベル・チャンダル!」
彼女はマリラの顔を思い浮かべることでそれを押しとどめた。
マリラへの忠誠とは別に、いまだ女王を想っているのだった。
「私の方こそ嫉妬しているのだわ。マリラさまがナイフを与えたあの紋章人に。彼の恋は破れたけれど燻ぶリ続けてる。
いえ、それが問題ではないわ。
私はもう女王の閨に必要でないことが…寂しいだけ…。変ね、自分からあのお役目を離れたのに…」
女王区画で一番若い女官は微笑んだまま涙を流したが、数分でそれは消えた。ふと思い当たることがあった。
「ワイズ・フールが拘留を解かれたら、彼は紋章人にちょっかいを出すに違いない。あの子には警告したけど、自分で振り払えるかしら…。いざとなったら三十六計逃げるにしかずって、知ってるわよね」
ベルはそれ以上考えるのを止めた。そして船内の予定表を開いた。
「九の月5日午後7時、兵站部左舷ホールで新糧食試食会&試飲会…。この日は非番ね。たまには酔いたいわ…」
彼女は長椅子にもたれ、目を閉じた。
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