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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第9章「飛翔」

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第9章「飛翔」7 ふとした意地悪をする

トペンプーラのアラームは鳴るか鳴るまいか、迷った。カレナードが何かの境界線上にいると、副長の勘が捕えていた。当たる確率が80%の彼の勘は、紋章人がハーリと同じ過ちを犯す可能性と女王の片腕として輝く可能性を同時に見た。
彼は即座に後者を取った。
悪いイメージこそ振り払わねばならなかった。
「そうですとも。v音結合を体が覚えるまで訓練あるのみ!夏至祭の前のようにネ!さ!集中してないとシバキますヨ!」
ガーランドはオスティア領国の首都ムザヤトマに達した。
内陸部の首都まで海からの風が吹き込み、停泊中のガーランドは蒸し暑かった。大山嶺から東へ広がる平原は盛夏の緑に染まっていた。
ベル・チャンダル女官が訓練生棟へ来た。
彼女は黒地に大きくぼかした白い花模様のワンピースにオレンジのベルトを締めていた。私服だった。
新参訓練生棟の詰所でカレナードは会った。
「カレナード、告白文はやはりワイズ・フールが兵站セクションで抜き取って、書類の束に突っ込んであったわ。さすがの彼も準公文書は捨てなかったようね」
「道化は罰を受けたのですか」
「艦長と女王が2週間の隔離独房収監を命じたけど、彼の性根には効かないでしょう。もうすぐ素知らぬ顔で出て来るわ」
女官はポケットから小さな封筒を出した。
「ここにあるのは告白文の写しです。原本は情報部に保管しました。あなたはしばらくの間これを読み返すべきと、マリラさまはお考えです。異例のことよ」
「異例って」
「わざわざ写しを書いた本人に戻すってこと。マリラさまはあなたにヴィザーツの自覚を強く育てて欲しいの。
どうしたの、不服があると言いたげよ」
カレナードはベルから封筒入りの写しを受け取った。封筒に女王の紋章を認めた彼は、少々感情的だった。
「女王さまに、写しは謹んで受け取りましたがナイフの件は別と、お伝えください」
「ナイフのことは自分で伝えて。私は係わるべきでないわ」
カレナードは意地悪を言った。
「かつてマリラさまと夜を過ごされたからですか」
ベルの頬に一瞬怒りが浮かんだが、すぐに誇り高い女の顔になった。
「ねえ、カレナード。どこで知ったにしても、あなたが私にそう言う権利があるかしら。私にはいい思い出なの。それを汚したくないだけよ」
少年にはぐうの音も出なかった。
「御無礼を…いたしました。マダム・チャンダル」
「気持ちが揺れているんでしょう、カレナード。私の過去に嫉妬なんかしないで、無心にあなたの仕事をしなさい。マリラさまに認められたいのなら」
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