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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第9章「飛翔」

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第9章「飛翔」3 父代わり母代り

カレナードは点呼前に部屋に戻った。
キリアンとアレクがヤルヴィのベッドを動かして、カレナードのベッドに寄せていた。ハーリ事件以来、ヤルヴィは一晩中泣くのだ。
ミシコはフィドルの弾きすぎでマメが潰れたヤルヴィの指に薬を塗ってやった。
カレナードが古い暦の土産話をするとシャルは「俺は絶対に猫年生まれだな」と主張した。
アレクは「俺は鷹がいい」と言った。
ヤルヴィはベッドに入ると、腕を伸ばしてカレナードと手を繋いだ。
「お休み」
「お休み、ヤルヴィ」
キリアンは2人に手を振り、ベッド周りのカーテンを引いた。
「カレナードは母親代わりか、手を握ってやらなきゃならんとは…。ハーリの事がよほどショックなんだな…」
大宮殿の事件では幸いにも一人の死者もなかった。噛みつかれたボルタを始め、軽症を負った数人は快方に向かっていた。
左腕に流れ弾が当たったリンザは痛み止を打ちながら講義に出ていた。
訓練生の誰もがハーリについて憶測した。だが、ハーリを玄街工作員と決めつけず情報部と警備隊の報告を辛抱強く待っていた。ハーリと訓練を共にしてきた彼らは、それが訓練生同士の礼儀だと考えたのだ。
翌日、カレナードがウビンカ通りへ出かける頃、キリアンとヤルヴィも部屋から降りてきた。
ヤルヴィは楽譜とフィドルのケースを抱えていた。
「カレナード、練習に行ってくるよ。ハーリの分も弾いてくるからさ、今夜もベッドをくっつけてよ。いいでしょ」
「ああ、点呼に間に合わないかもしれないけど。キリアン、頼んでいいかい」
「分かった。俺もトペンプーラさんの濃い講義に行きたいぜ。あとで要点を伝授してくれよ」
キリアンはまるで父親のように言った。
「ヤルヴィ、行くぞ」
ヤルヴィはホッとした顔で駈け出した。カレナードは軽い夕食を取ったあと、上層天蓋下に向かった。
トペンプーラは昨晩より深く突っ込んできた。
「カレナード、あなた、直感だけの人ですか!重複理論の基本が分かったからと言って、その先の理屈を勝手に飛躍させるのだけは止めなさい。危険な癖です」
「新しいコードを開発できるきっかけになりませんか」
「それを言うのは10年早いデス!コード開発部の連中の耳に入れば、あなたは確実に厚顔無恥ってことになります。
はい、もう一度。cortf指定がvertf指定の干渉を受ける根拠である物理法則を言ってみなさい」
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