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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第9章「飛翔」

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第9章「飛翔」2 変化の兆し

授業は午後9時に夜間飛行訓練の光が第1甲板から離れるまで続いた。
「あなたに足りない部分が分かりました。続きは明日。ワタクシはいったん情報部に戻りマス」
屋根裏部屋の螺旋階段を下り、キチネットの小部屋に出た。トペンプーラはナッツ入りのクラッカーと飲み物を出した。グラスからアルコールが香った。
「軽いヤツですから、大丈夫。あなた、結構強いでしょ」
「キリアンが言うには、僕は笑い上戸で酔っ払っても踊っていたと」
「覚えてないほど飲んでも潰れはしないのネ」
「ところで、トペンプーラさん、寅年は生まれつき虎児がついていそうですね」
トペンプーラは流し台で顔を拭っていた。
「おっと。覚えていましたか。これは女王に教えていただいたのデス。アナザーアメリカの創生以前に『東洋』という文化圏で使われていた暦で、12種の動物を生まれ年に当てて運気を読んだそうです」
「マリラさまの故郷は北メイスの海を越えて10000km向こうの土地と聞きました。そこが『東洋』でしょうか」
「女王の故郷については初耳ですネ。あなた、それを彼女から直接聞いたのデスか」
「夏至祭の夜に。女王はそこで生まれたと」
「気になるのネ」
カレナードはトペンプーラの鋭い洞察力で、女王へのやり場のない想いを見透かされるまいとした。
「元アナザーアメリカンのただの好奇心です。創生伝説では『女王は黒い嵐の中から浮き船と共に現れた』としか伝えられていませんから」
トペンプーラはすでに気付いているのかもしれなかった。
「ふふ…、そうでしょうか」
彼は試すように言った。「ハーリ・ソルゼニンの事をワタクシに訊きませんネ」
カレナードは年の離れた友人をそっと見てから答えた。
「そのうちに正式な発表があるはずです。新参はそれを待っています。だから僕もここで余計なことを訊きません」
「…変わりましたネ、以前はマルゴの安否をしつこく訊いたのに」
「動揺したくないのです…。 平気なふりをしていても、それほど強くないですから」
「なるほど」
トペンプーラは年の離れた友人の新たな一面を知った。自分の弱点を知り、その深みにはまらないよう用心している様子を可愛らしいと思った。
「本当はワタクシに訊きたいことがあるでしょ」
「だめですよ、トペンプーラさん。僕を誘導して御自分のペースに乗せるつもりでしょう」
カレナードはクラッカーを数枚重ねて頬張り、音を立ててかみ砕いた。トペンプーラはグラスを空けた。
「明日はコードの応用重複理論をやります。ビシビシとねッ!」
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