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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第9章「飛翔」

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第9章「飛翔」1 高い屋根裏部屋

第9章に入ります。
ハーリ・ソルゼニン事件から3日後、カレナードは上層天蓋下のンビンカ通り3番地の高い屋根裏部屋にいた。3番地は上層天蓋フレームの一番高い場所の直下にあり、夏の夕陽を受けて黒いスレート板の屋根が深く影を落とした。カレナードはその一画が鬱蒼とした森のように思われた。
オレンジ色の光が部屋の主であるトぺンプーラの顔を照らした。彼は先の事件の調査中にもかかわらず、カレナードの個人教授をしっかりスケジュールに組み込んだ。
「約束ですからネ。それにワタクシとて、たまには自分の部屋に帰りたいデスから」
細長い部屋の床は磨き抜かれて琥珀色に光っていた。そこに薄いマットレスとクッションチェア、いくつかの籐籠があるだけだった。トペンプーラの寝床からはハッカとオレンジと汗が混じった男の香りがした。カレナードはそこに充実した男性を感じていた。彼は訊いた。
「ここは眠るだけに使っているのですか」
「究極のプライバシーを必要とする時にもネ。ようこそ、蛇の巣へ」
「え、虎穴と思って来たんですよ」
「あっはっは。虎児を得に来ましたか。確かにワタクシ、寅年の生まれです」
「寅年って」
「今は使われていない太古の暦ですヨ。この話はまたあとで」
その男はいきなり雷を落とした。
「ボヤボヤしてる暇はありません!コード物理法則のどこで引っ掛かっているのデスか!」
カレナードは急いで懐からノートを取り出した。トペンプーラはそれをひったくり、2秒後には質問を繰り出した。
「コード範囲指定は、時間と空間把握だけで十分デスか、カレナード!」
「そ、そうじゃないのですか」
「甘い!そして浅い!あなたネ、コード対象物自体の可変、あるいは可塑性への考察がすっぽり抜け落ちてマス。
よろしい。では、コード対象物が固体・液体・気体のうち、もっとも可変の可能性が大きいのはどれなの、その理由はッ。ついでに、コード対象物が運動状態と静止状態の場合は、どう考えマスか。
間違いは大歓迎。ガンガン行きますヨッ!はい、座って座って」
トペンプーラの授業は体術のそれと変わらないくらいに集中力が試された。
次々と繰り出される質問で、カレナードはすっかり弱点をさらけ出すことになった。
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