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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第8章「刃(やいば)の夏」

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第8章「刃(やいば)の夏」54 たとえ防弾チョッキを着ていても

ホワイエに通じる扉はすべて閉められ、封鎖されたホワイエの奥に見慣れた2人の友がいた。
両手をあげたアヤイ・ハンザの後にハーリ・ソルゼニンが立っていた。アヤイの背にハーリの銃が付きつけられていた。居並ぶ衛兵達からは20mほどの距離があった。
カレナードは衛兵の列から前へ出て呼びかけた。
「ハーリ、訳を聞かせてくれ。君の話を聞きたいんだ」
ハーリは顎をしゃくった。
「こっちへ来いよ、紋章人」
その声音にはすっかり変わってしまったハーリの絶望が匂っていた。
カレナードは一歩前へ出た。
「ハーリ・ソルゼニン、なぜ僕を呼んだ。理由があるだろう。聞かせてくれ」
「もっと近くに来るんだ、女王代役の女男」
一歩前へ出た。
「それが理由なのか。僕が女王の身代わりを務めたことを知っているんだな」
ハーリはアヤイから銃を離して、カレナードの足元を一発撃った。そしてすぐに狙いをアヤイに戻した。
「さあ、もっとこっちに来い。お前は俺たちを騙したんだ。大人しそうな顔して情報部の犬になっていたんだ」
カレナードは立ち止まった。
「アヤイを離してくれないか、ハーリ。彼は何の関係もないんだ。君の狙いは僕だけなのだろう。彼を巻き込まないで欲しい。お願いだ」
「うるさいな、カレナード嬢」
ハーリは素早く銃を撃った。弾丸はカレナードの脇を通り過ぎ、衛兵の盾に当たって高い音を立てた。
「惜しかった。もう少しで美人の顔に穴が開くところだったのに」
カレナードはまた一歩前に出た。2人の間は15mになった。しばし沈黙があった。カレナードの心臓は早鐘のように打っていた。警備隊が早く手を回してくれることを祈りながら、ハーリの心に問いかけた。
「ハーリ、僕を殺したいなら、そうしろよ。その前に教えて欲しい。君と一緒の女の人は無事なのか。その人は誰なんだい」
ハーリの怒りと絶望に我を忘れた目が急に苦しみの色に変わった。
カレナードは確信した。ハーリの行いの元はその女性のためであると。
「彼女は誰なんだい、ハーリ」
じっとりとした空気がホワイエに満ちて、ところどころにあるテラスへの掃出し窓からは陰鬱な曇り空が流れた。先ほどから銃を握りしめているハーリも、その場にいる誰もかれも、体中に汗を滲じませた。
カレナードはもう一度訊いた。
「彼女は生きているんだな」
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