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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第1章「禁忌破り」

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第1章「禁忌破り」29 田舎道にて(挿絵有)

翌日、街道バスに3時間揺られたあと街道の町に降りた。
周囲は畑と放牧地ばかりの田舎だった。中央広場に公会堂があり、周りを雑貨店と食堂を兼ねた店や服地屋、パン屋兼カフェ、酒場と旅籠が並んでいた。
カレナードはすぐに自分たちが人目を引く存在と知った。地味ながら都会仕立てと分かるマントとブーツ。そのうえ、若い男女が連れ立っていれば、好奇の目で見られて当然だった。2人がパン屋の隅のカフェに入ると、たちまち冬至祭の準備で公会堂に集まった人々が周りのテーブルに陣取り、質問を浴びせた。
「どこから来た。」「オルシニバレ市から。」
「調停はどうなった。」「うまくいった。」
「次の調停はどこだ。」「オーサ市です、ガーランドがこの辺を通りましたか。」という具合で、オルシニバレ市から来たと言えば、自然とガーランドの話になるのだ。しかし、問題はそのあとで「どこへ何しに行く。」と聞かれれば、まさかガーランドに乗り込むためとは言えない。
地図を広げてガーランドが行く先の町を指して「ここに冬至までに訪ねたい人がいる。」と罪にならない程度の理由をでっちあげた。
世話好きな男が「その町ならよく知ってる。連れてってやろうか。」と言い出した。
マヤルカが愛想を振りまき「そっと訪ねて驚かせたいの。お心遣いに感謝しますわ。」と、はぐらかす一場面もあった。
「オルシニバレの工員さんなら、これ直せるかい。」と腕時計を差し出す男もいた。カレナードは持ち合わせの道具でそれを直した。怪しまれないためにはお安い御用なのだ。
目撃談はあったものの、ガーランドは遠かった。山脈の麓に広がる麦畑の道を北へと進んだ。バスはなく乗合馬車は少なく、自転車を使うことが多くなった。道の途中で夜になり、農家の納屋を借りて眠る日もあった。
挿絵(By みてみん)
農家のおかみさんが湯たんぽをひとつ貸してくれた。
「せめてこれを使いな。似てない姉妹さんよ。」
マヤルカは干し藁を窪ませて、その中に借りた毛布を敷いた。
「ねえねえ、私たち、姉と妹だから湯たんぽを一緒に使いましょうよ。」
カレナードの背中と自分の腹の間に湯たんぽを挟んで横になった。
「寒いけど、暖かいわ。」
カレナードは背中から回された彼女の手をさすった。それから干し藁を自分たちの上にかけた。
冬至祭前日、カレナードとマヤルカは自転車に飛び乗り、雨の中を逃げていた。食堂にいた酔っ払いたちは、ガーランドになにかしらの恨みを持っていた。最初は機嫌がよかったが、話がガーンラドに及ぶと手のひらを返したように態度が変わった。
「なんであんなに険悪なの。私たちが何したって言うのよっ。」
村はずれの大木のしたで雨宿りした。マヤルカは怒ったが、カレナードはガーランドの情報が途絶えたことが痛かった。ここから北に進むべきか、迷った。
悪いことは続いた。雨は激しさを増し、民家の明かりは見えなくなった。地図にあるはずの次の町を見失って、2人は途方に暮れた。雨の闇夜で迷うのは危険だった。自動車の明かりがうしろから近付いてきた。2人は助けを求めた。
「後ろの荷台にどうぞ、濡れねずみさん。着くまでこれでも飲むといい。俺はダナンだ。」
渡されたのは、蜜酒の瓶だった。
荷台にはキャベツの香りのするコンテナ台車が積んであった。中年の運転手は出荷の帰り道なのだろう。まもなく運転手はガレージに車を入れた。2人は自転車を降ろした。
「話はあとだ。母屋に来い。」
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