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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第8章「刃(やいば)の夏」

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第8章「刃(やいば)の夏」52 それがテロとは気づけないまま

ミンシャとマヤルカは心神喪失状態の女と聞いて、顔を見合わせた。
「女連れで何をやらかしたンだろう」
「ミンシャお姉さま、まさか…ハーリの親戚のあの人では。亡くなったと言ってたけど…」
キリアンが言った。
「心当たりを探そう。彼が何をしたにしろ自分から出頭させるんだ」
ホーンとナサールも応じた。
「その方がいい。罪が軽くなるかもな」
カレナードとキリアンは頷いた。
ハーリ・ソルゼニンは息を潜めていた。彼は施療棟看護師の制服姿で軍楽団用の倉庫の一つにいた。そこは大宮殿の大広間を囲むバルコンの1階に面していた。楽団の楽屋とつながっていて、礼装や予備の楽器の棚が並んでいた。
目の焦点が合ってないマルゴ・アングレーが、床に横たわっていた。古ぼけたタオルを握りしめ、自らの意志を示さない眼が不安に満ちていた。かつての面影はなかった。
「情報部が、いや、ガーランドが姉さんをこんなに変えてしまった。あの活き活きとしていたマルゴ姉さんを!」
ハーリは艦内放送を聞き、一つの決心を固めた。
「どうせ捕まるなら、姉さんが果たせなかった仕事をしてあげるよ。安心して、マルゴ姉さん。女王かカレナードと刺し違えればいいんだろ。もうすぐここに女王も来るんだ。
1人くらいなら仕留めてみせるよ。姉さんの重荷を僕が背負うよ。だから元の姉さんに戻ってよ」
ハーリは情報部と施療棟で盗んだ背嚢を開けた。短銃をベルトのホルダーに収め、射程の長い銃をもう一つ持った。ナイフの技に自信はなかったが、ベストの内側に忍ばせた。口の渇きを覚えた。彼は水筒からひと口飲んで、それをマルゴに渡した。
「いいかい、姉さんはここでじっとしていて」
ハーリは茶色の髪を隠すように礼装用の帽子を頭に乗せた。彼はそっと倉庫の扉を押した。バルコンにはまだ捜索の手はなかった。
新参訓練生の一団は大広間の右手にある衛兵詰所の近くにいた。ナサールが衛兵相手に頑張っていた。
「ハーリの目撃情報くらいくださいよ。俺達は彼を出頭するよう説得します」
「君たちの気持ちは分かるが、今から大宮殿の捜索だ。仕事の邪魔にならないよう、訓練生は広間の真ん中で全員四列縦隊を組み、待機してくれ。訓練生管理部!号令を頼む!」
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