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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第8章「刃(やいば)の夏」

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第8章「刃(やいば)の夏」51 告別の朝に

ヤッカは確認した。
「マルゴは重い神経疾患というが、その辺はどうなんだ」
「元情報部員ですからネ、ハーリが上手く誘導すれば、彼女は付いて動けるでしょう。
さきほど新参セクション長から彼のデータをもらいました。訓練生が行き慣れている場所の他に、甲板材料部関係の倉庫と軍楽団の練習場が当面の捜索箇所デス」
「彼が周到な準備をしていたなら厄介だ。艦内に拘束および逮捕の命令を流すぞ」
「分かりました。艦長にも連絡を」
ボルタはヤッカに艦長への回線を繋ぐよう命じられ、艦内電話を取った。
「新参が超古参を舐めたままでは示しがつかないだろ、ソルゼニン。大人しく出頭してくれよ」
大宮殿の大広間ではソカンリの告別が行われていた。
大広間右側のホワイエに通じる八つの扉は開け放され、ソカンリの棺に薄明い光を投じた。
十ヶ月訓練生のシェル・ピンクと黒の夏の正装に混じって、10人ほどの新参訓練生が白と水色の正装でいた。アヤイ・ハンザがキリアン達に駆け寄った。カレナードがひどく気落ちしているのを見たアヤイは、花籠を差し出した。
「施療棟のドクトルが特別に花を分けてくれたんだ。ソカンリの棺に副えてくれないか、カレナード」
カレナードは昨日の痛手と捨てがたい未練をなんとか隠した。
ソカンリの魂を慰めるのに専心しようと思った。
小さな白い花を一輪取った。
棺の中のソカンリは、防腐処置のために花と同じくらい白い顔をしていた。唇には薄い桜色の紅が塗られていた。
「さようなら、ソカンリ。君が最期に伝えてくれた気持ちは受け取ったよ」
白いリネンで覆われたソカンリの頭の傍に花を置いた。彼女の落ちくぼんだ眼窩に死の苦しみがまだ漂っていた。
キリアンとホーンも、花を手向けた。そのあとにミシコ達が続いた。
訓練生管理部長が告げた。
「午前10時にジカ訓練生の棺を第2甲板へ移し、ミセンキッタ行きの飛行艇でおくります。告別の方は急がれよ」
それからすぐにガーランド中に臨時放送があった
「総員に告げる。新参訓練生ハーリ・ソルゼニンを見つけ次第、拘束せよ。抵抗する場合は警備隊を呼べ。ソルゼニン訓練生は15歳、髪と目の色は茶色、心身喪失状態の女性を連れている。女性は保護せよ。総員に繰り返す、ソルゼニンを発見、拘束せよ」
訓練生たちに動揺が走った。ミシコは歯噛みした。
「なんてことだ。昨日はちゃんと軍楽団の練習に出たってヤルヴィが安心してた矢先から!」
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