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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第8章「刃(やいば)の夏」

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第8章「刃(やいば)の夏」43 夏の制服を着て 

キリアンは再び考えた。
「カレナードは相当惚れっぽいのかもしれない。あの様子だと、マリラさまへの想いとは別にソカンリにも恋心があったとしか思えないな。好きでなけりゃ泣いてやれるものか。それにしても可哀そうに、ソカンリ・ジカ…」
ホーンが2人の肩を押して、講義室に向かわせた。
「明後日、彼女の傍で泣いてやれ。俺も告別に行くよ」
翌日は週末で、講義は昼過ぎに終わった。オスティア領国に近く、雲が広がっていた。
ヤルヴィは軍楽団に出かけ、キリアンとカレナードは告別のために夏の制服を準備していた。白のチュニック丈のブラウススーツはかっちりと仕立てられ、腰の切り替えで裾広がりになっていた。ズボンは脇に銀のラインが入った水色だった。
ミシコが2人に話しかけた。
「管制部もお悔やみに行くことにしたよ。ジカ訓練生とは、何度も通信を交わしたんだ。知らない仲じゃない」
キリアンが帽子を頭に乗せていた。
「じゃあ、ミンシャとリンザを誘って行こう。マヤルカも」
喪章の黒い房を取り出したところに、半分開いた扉を軽く叩く音がした。シャンカール女官だった。
「カレナード・レブラント、女王がお呼びです。同行願いますわ」
「アライアさん、待ってください。着替えます」
「女王の御前ですもの、その服がいいわ。よく似合っている」
アライアは女官服ではなく、私服のゆったりしたワンピースを着ていた。
「昼前にあなたの黒いケースが届いたわ。マリラさまの御用は告白文に関することでしょうね」
アライアは上昇するエレベーターで途中の階のボタンを押した。上層天蓋区画の4階だった。
「あとは1人で行ってちょうだい。私は今から非番なの」
「この階にお住まいですか。この階は総合施設部ですけど」
彼女はさっとエレベーターから出た。
「施設部の保育の園に子供を預けてるのよ。今日で1歳になるの、男の子!」
「え…子供…」
女王の衣装係筆頭女官はくるりと背を向けて、片手を振った。エレベーターはカレナードだけを運んだ。
「アライアさんはお母さん…だったんだ…」
女官達の中でも鋭い刃物を思わせる彼女。夏至祭の晩にワイズ・フールの悪戯を撃退した鞭さばきは壮絶だったという。
その彼女の引き締まった頬が乳飲み子の前では緩むのだろうか。私服のアライアを思い出しているうちに女王区画の入り口にいた。
「告白文はしっかりチェックした。キリアンにもミシコにも読んでもらったんだ。マリラさまがわざわざ呼ぶなんて…何かあったのか…」
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