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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第8章「刃(やいば)の夏」

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第8章「刃(やいば)の夏」42 短い伝言

「紋章人め!アナザーアメリカンのくせに!踊り比べの朝練だって副長が面倒みてやって!どこまであいつは恵まれてるんだ…」
ハーリの羨望をよそに、トペンプーラはカレナードに約束させた。
「明後日の午後5時から2時間、コード理論と細胞学、ついでに分子組織論もがっちりやりましょう。場所はワタクシの手狭なペントハウス。上層天蓋下のンビンカ通り3番のアパルトマンです。中庭に入って正面奥の扉で呼び出しベルの215を押しなさい。ま、覚悟してきなさいネ」
ハーリは暗い情熱に憑りつかれた目でつぶやいた。「彼らは僕を騙した…」そして、どこかへ駈け出した。
航空部に戻る途中で、カレナードは施療棟に寄った。ソカンリの容体を聞きたかった。治療専用棟の詰所で、面会できないとだけ教えられた。それだけ悪いということだ。
彼は5階建ての窓を見上げた。どこかに彼女の病室があるはずだった。それから、第1甲板へと急いだ。
彼が去った後にハーリが静かに現れた。彼はどこで手に入れたのか、施療部の看護士の制服を着ていた。そして長期治療専用棟に向かった。
次の日は講義が再開した。
1ヶ月ぶりの講義棟はきれいに塗り直され、新鮮な始まりだった。そんな中、航空部勤務だった訓練生達に召集があった。2限と3限の間に講義棟の詰所に行くと、アヤイが泣いていた。カレナードとキリアン、そしてホーンはソカンリの死を悟った。
「いつ、亡くなったんだ」
アヤイは「今朝…」と言って、夏服の袖で顔を拭った。彼はカレナードに封をしたメモを渡した。
「3日前の晩、彼女の意識が戻ったとき、ドクトル・ウマルが傍にいて彼女から君への伝言を書きとったんだ。俺が預かってきた。どうか読んでくれ」
カレナードは封を開けた。ウマルの字が並んでいた。
『あなたにひどいことをした。許して』
短い言葉だったが、彼女を感じた。アヤイが咎めるように訊ねた。
「これ、どういうことさ」
カレナードはふとアヤイのソカンリへの淡い想いを感じた。
「うん…彼女と僕には行き違いがあったんだ。君が言ったとおり彼女は焦っていたんだな…。でも…」
瞼の裏がひどく痛んだ。
「死んだら何もならないじゃないか…ソカンリ…」
メモの上に涙が落ちた。そこにアヤイの涙が加わった。
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