挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第8章「刃(やいば)の夏」

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

304/388

第8章「刃(やいば)の夏」38 猫をかぶったまま生きようと?

混乱する甲板上で訓練生達がカレナードを見つけた。キリアンが訊いた。
「ジカ訓練生は」
「良くない感じだ。意識が戻らない」
アヤイ・ハンザ十ヶ月訓練生は青ざめていた。
「彼女…無理していたのかな…」
ホーン・ブロイスガーの眉が寄った。
「どういうことだよ」
アヤイはためらいがちに言った。
「勝手に言っていいものか分からないけど…。彼女はとっくの昔に婚約者と式を挙げてたはずなんだけど。本当は結婚したくなくて、十ヶ月訓練生の名目で家出したんだよ。夏至祭のあとで俺達十ヶ月の中からガーランド予備訓練生を選ぶことになっただろう。それで、彼女は…」
「張り切って見栄えのいい航空部に来た、というわけだ」
キリアンの推測は当たっていた。カレナードの胸の奥が痛んだ。彼女と自分にそれほど違いがあるとは思えなかった。
アヤイは辛そうに頷いた。
「俺はずっとハラハラしていたよ。ソカンリは練習機に乗ると疲労困憊していた。そのくせ古参訓練生に言い寄ったりしてさ…。焦りがあったと思う…。何度か諌めもしたけど、彼女は…」
ホーンは首をひねっていた。
「よく分からねえな。婚約解消すれば話は簡単だろ。家の事情が何だっていうんだ。勘当でもされるのか」
カレナードは彼女の瞳の色を思い出していた。それは今までと違った色彩を帯びてきた。
ドルジンが彼らに解散を命じた。その日は訓練後のミーティングはなく、各自で記録を書き残して教官室を後にした。
事故の件は訓練生棟にも広がっていた。管制室勤務の連中は男子訓練棟の前庭に集まり、航空部勤務のキリアンやホーンを待っていた。そこへ施療部からマヤルカが帰って来た。彼女は彼らの質問に答えた。
「私は直接見たわけじゃないから、そのつもりで聞いて。重傷なのは確かよ。彼女用に吸入酸素を200ℓは精製したから、おそらく昏睡状態か、それに近いわ」
一同は揃って夕食を取った。マヤルカはカレナードの隣の席に素早く座った。ミンシャ、ミシコ、ホーン、キリアン、ナサール、それにリンザが加わり、食堂が閉る時刻まで居座った。ソカンリが家出同然でガーランドに乗船したことを、リンザは非難しなかった。
「ジカ一族の事は以前聞いたのよ。ミセンキッタ東部の古い一族で、良しにつけ悪しきにつけ父権が大きいのが特徴ね。彼女、きっと、いい子だったのよ」
ホーンが訊いた。
「いい子なら、なんで家出するんだ」
リンザは爪に息を吹きかけながら応えた。
「親にとっていい子って意味よ。気に入らない婚約を承諾してみせるくらい、いい子を演じていたの。自分に嘘をついたのよ。たぶん、それまでも自分をだまし続けてきたんだわ。けど、我慢の限界が来て悪い子にならざるを得なかったのよね」
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ