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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第8章「刃(やいば)の夏」

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第8章「刃(やいば)の夏」36 空の城

ヤッカは言った。
「高度の死地に挑むのか」
「死ぬつもりはありません。サージ・ウォールの外側、アナザーアメリカの外界を見たいのです。父の影響かもしれません」
「父親か。何をしていた人かね」
「井戸掘りと灌漑施設の設計家で、自称『働く地質学者』でした」
ヤッカは小さく笑ったようだった。
「君の父親はきっとマギア・チームの代表とウマが合っただろう」
台地が途切れた所で、隊長機は降下に入り、ピード機が続いた。ピード・パスリは隊長機のうしろでつぶやいた。
「紋章人め。懲罰をやり遂げたからって隊長に甘ったれていたら、ぶっ殺すぞ」
それを第2コクピットで耳にしたボルタは苦笑いした。
「ピード、彼はいいライバルになるぞ」
「俺は甘ちゃんが嫌いなんだ」
「そうかね。甘ちゃんどころか、じゅうぶん根性あるぞ。誰かさんみたいに10日間の清掃懲罰がイヤになって部署の廊下に妙な清拭コード使って塗装を台無しにするようなことはなかった」
「同期だからって、俺の汚点をむしかえすなよ、ボルタ」
「へへっ。お前が一人前だから言ってるのさ」
ガーランドが視界に入った瞬間、カレナードの胸に航空部を選んだわけが、もう一つ浮かんだ。
「飛行艇やトールを乗りこなすパイロットになれば、手っ取り速く女王に認められると思った」
見栄っ張りで欲深で子供っぽい自分がいた。それを否定しなかった。
今でも十分に見栄っ張りで欲深ではないか。
隊長機はガーランドに近づいた。巨大な浮き船を前にして、カレナードの脳裏に創生伝説の一節が走った。
『その昔、ヒトはあまねく大地に満ち、この世をまず作物で満たし、次に火と鉄で満たし、さらに汚わいと毒で満たしながら、あまねく大地の精霊を踏みつけ忘れ去った。
ある時、大地の精霊はヒトが自分達と交感を絶って久しいことに怒り、あまねく大地を嵐で覆い、ヒトを滅ぼそうとした。その時、1人の女がその血と魂を引き換えに、暗い地中から浮き船を呼び覚ました。わずかに生き残ったヒトはそれに乗り、アナザーアメリカの祖となった。女は浮き船の船主にして女王となった。
浮き船はアナザーアメリカをあまねく廻り、嵐の壁に閉ざされた土地を全てのヒトの土地にした…』
「マリラ…」
女王への想いが不意に湧き上がったが、ヤッカの声でそれは一瞬で霧散した。
「第1管制棟、こちらトール隊長機。これより着艦する。レブラント、周囲確認!」
「確認します。ピード機は後方3km。飛行艇グリーン・ヘッドが第2甲板から離陸、当機前方8kmを通過中。第1甲板はモス・ツー練習機が着艦中。他に機影なし」
「よし、モス・ツーの後に着けるぞ」
5秒後、管制から緊急信号が送られてきた。ヤッカは通信を受けた。
「モス・ツーが着艦に失敗。ドルジン、救助だ。レブラントは消火剤噴射口をドルジンの指示で開け」
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