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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第8章「刃(やいば)の夏」

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第8章「刃(やいば)の夏」35 隊長機のコクピットで

トール隊長機はポルトバスク市に注ぐ河の一つ、アーブルカに沿って西へ飛んだ。2km遅れて、ピード・パスリ機が付いていた。ピード機の第2コクピットにはボルタが乗っていた。
カレナードはレーダーの前にいた。
「機影発見、当機の左後方、約20km、高度1300m、速度毎時290km、北に向かっています」
ヤッカが訊いた。
「機種は分かるか」
「不明です」
ドルジンから通信があった。
「ブルネスカ領国郵便機だ。尾翼にマーク確認。帰投後、ポルトバスクのヴィザーツ屋敷に照会します」
カレナードは訊いた。
「航空機を調べているのですか」
「それもある。大山嶺に玄街の足跡がないか、探しているのだ」
「ここで玄街ヴィザーツが何を」
「レーダーから目を離すな、レブラント」
隊長機は高度3000メートル近くを飛んでいた。機体が小刻みに揺れた。標高2500メートル級の大山嶺が手に取れるようだった。ヤッカはドルジンに呼びかけた。
「高度2950だ。もう少し上れるか。新参にアーブルカ高原台地を見せたい」
浮き船がアナザーアメリカの空を飛んで2500年、飛行艇が1500年、トール・スピリッツが400年、そしてアナザーアメリカンの飛行機が40年、その間、どの飛行物体も高度3000メートルを越えられなかった。多くのパイロットがその限界突破を試み、原因不明のエンジン停止のために落命してきた。アナザーアメリカの空にも目に見えないサージ・ウォールがあった。
ヤッカの声が響いた。
「よし、レブラント、高度計をよく見ていろ。同時にエンジン音に要注意」
日は傾いていたが、十分な陽光が灰茶色の台地を舐めるように照らしていた。草木はなく、岩と砂だらけの土地だった。カレナードは高度を報告した。
「高度2960、2965、2970…」
「怖いか、レブラント」
「いえ、エンジン音に変化なし」
返事の直後に、カチカチと異音がした。
「隊長、今の音は」
「高度2975の前触れだ」
「はい、現在高度2973です」
「そろそろきびしいか。ドルジン、状況はどうだ」
いつもどおりの太い声が返ってきた。
「念のため高度2974を維持。台地通過まで15分。台地の先のパーリー峡谷から帰投コースを取ります」
ヤッカは探索を続けながら訊いた。
「君が航空部を選んだ理由は何だ」
カレナードはちらっと3000メートル級の岩山の向こうを見た。
大山嶺の西でサージ・ウォールに吹き上げられた砂塵が、太陽をオレンジがかったピンク色に染めていた。
「僕は、いつか、サージ・ウォールを飛び越えたいのです」
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