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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第8章「刃(やいば)の夏」

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第8章「刃(やいば)の夏」34 夏の闇が忍び寄る

ハーリは震える指先でページをめくった。
「マルゴ姉さんは女王を、いや、カレナードを2発撃った。弾は防弾マントに食い込んだだけ…。パレード会場の桟敷で逮捕され、ガーランドに移送…。やっぱり姉さんは生きているんだ!これではっきりしたぞ、トペンプーラ副長の嘘つきめ…」
ハーリはマルゴの居場所を突きとめたかった。彼女に会いたかった。その日、彼は軍楽団の練習場に現れなかった。
ヤルヴィはハーリを探した。点呼の前にT班の部屋の前で会った彼は別人のようだった。
「ハーリ、どうしたのさ」
彼はひどく疲れていた。
「僕にかまうな」
背を向けて扉の向こうに消えた姿に胸が痛んだ。ヤルヴィは軍楽団長に相談しようと決めた。
八の月の半ばを迎え、南下するガーランドは湿った南風の影響を受け始めた。連日、雲りがちな空に偵察任務の小型飛行艇が大山嶺へと出ていった。
カレナードは懲罰期間を終えた。日焼けした鼻の頭と頬骨の上が小麦色になっていた。黒いケースを首から外して以来、航空部のヴィザーツ達の態度は変わっていた。挨拶を無視されることはなくなり、ピード・パスリもぶっきらぼうに返事をくれた。
道具をしまい、ドルジン教官に報告に行った。教官室にはヤッカ隊長がいた。
「途中で根を上げて、甲板じゅうに清拭コードをぶちかますかと思ったが、そうでもなかったな」
ドルジンが懲罰終了証明書にサインした。
「ピードが何度も蹴りを入れていたようだが、よく耐えた。隊長、ヤツも憎まれ役をよくやってくれます」
カレナードは敬礼を返した。
「いろいろとありがとうございました」
教官は彼を引き留めた。
「レブラント、隊長がお前に話があるそうだ」
ヤッカとドルジンはカレナードを甲板に連れて行った。夏の夕暮れは晴れ渡っていて、東方50kmにポルトバスク市が見えた。ヤッカが言った。
「君にトール・スピリッツ隊長機の第1コクピットでレーダー監視を命じる。管制室、こちら警備隊隊長。トール、夏季定時偵察飛行に出るぞ。今回はレブラント訓練生を同行する。第2コクピットはドルジンが搭乗する」
彼は予備の軽装パイロットスーツをカレナードに渡した。
「訓練期間の終了まで間がない。少しでもカンを取り戻しておけ」
「あ、ありがとうございます。ヤッカ隊長」
「B監帰りの頃とは、すっかり顔付きが違っている。さあ、急いで着替えろ」
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