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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第8章「刃(やいば)の夏」

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第8章「刃(やいば)の夏」33 真実がいつも味方とは限らない

ハーリは書類を運ぶカートを押してチャルマットと並んだ。彼は保管庫の扉の前に立ち、周りに人けがないのを確かめた。彼の手の甲がハーリの肩から首筋へと動いた。
ハーリは心の中で唾を吐いたが、おくびにも出さなかった。
少佐はコードを唱えた。
「rushurfuyytt-esh-okuuhurr 」
特別保管庫を開く時に同行者は正面を向いたままでいる決まりだったが、ハーリは堂々と少佐を見て音と口の動きを盗んだ。彼はセキュリティ・コードが固定コードの派生型だと、すぐに理解した。
チャルマットは「いけないな」と言い、形だけの右向け右を命じた。少年は少佐を見上げ意味ありげにささやいた。
「首筋はくすぐったいです」
こういうことが何度かあって、彼は完全にコードを自分のものにした。そして少佐の隙を狙い極秘資料『ポルトバスク市・女王暗殺未遂事件』の紐を解いた。
それは残酷な事実だった。
「まさか…マルゴ・アングレーがマリラさまを撃った…玄街間諜だったなんて…。そんなことが…!」
ハーリの中で何かが逆転していった。彼にとって唯一人の女性だったマルゴが悪であるはずがなかった。
「マルゴ姉さんにはわけがあったんだ。そうに違いない」
彼は事件の記録を読み込むうちにどこにも彼女の死亡時の記録がないことに気づいた。
『四の月、25日。午後3時7分、ポルトバスク市パレード会場桟敷にてマルゴ・アングレー拘束。トペンプーラ情報部副長、情報部員1名、警備隊2名によって確認』
彼女に関する具体的な記述はそこまでだった。
「トペンプーラ副長…。マルゴ姉さんの遺品を…写真を渡してくれた人だ。彼は姉さんが心臓病で急死したと…。なら、彼は姉さんが玄街間諜と知っていて、僕には嘘を告げたことになる!」
マルゴに残した愛着が怒りへと転じた。
「僕を騙したのか…」
第1保管室の特別保管庫は主に乗組員の個人情報が詰まっていた。ハーリは第2保管室と同じセキュリティー・コードを試した。果たしてそこでも扉は開いた。
彼はトペンプーラの記録を探った。そこに付帯資料として彼が指揮した作戦が記されていた。六の月には『単独行ベアン囮作戦』とあった。その前が四の月の『女王暗殺阻止作戦』だった。
ハーリはさらに『女王暗殺阻止作戦』詳細録を探し当て、秘かに図書館の個人閲覧室へ持ちだした。もう少しで声をあげるところだった。
「女王の代役に…カレナード・レブラントだって…!じゃあ、玄街間諜容疑で取調べを受けていたのは嘘だったのか…!彼は…彼も、僕を、いや、すべての新参を騙していた…」
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