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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第8章「刃(やいば)の夏」

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第8章「刃(やいば)の夏」27 罪の奥底

ハーリは練習が半分過ぎたところで現れた。彼はヤルヴィと目を合わさず、「音に集中しなきゃ」とだけつぶやいた。
部屋へ帰るなり、ヤルヴィは楽譜の束を机に叩きつけた。
「ハーリは秘密を抱えているんだ。僕にだんまりを決め込んでさ!」
シャルは可笑しそうに彼に近づいた。
「彼は情報部で学んだのさ、『敵を欺くにはまず味方から』ってね」
ヤルヴィは猛然と返した。
「ガーランドの中に敵を作ってどうするんだよ!アホ河童!」
「怒るなよ、ヤル坊。君はハーリの隠し事に嫉妬してるのさ」
「だって、水くさいじゃないか。信用されてないのかって思うと寂しいよ」
「素直だな、さすが10歳」
頭を撫でようとしたシャルの手を、ヤルヴィは払いのけた。
「シャルは少しは大人になれないの!僕をいつまでも子供扱いしてさ」
アレクがレポートの手を止め、呼びかけた。
「2人とも、その辺にしとけ。講義の再開までにちっとは復習しておけよ。来年も新参やりたくないだろ」
シャルは伸びをした。
「耳が痛いぜ、アレク先生。さあ、やろうぜ、ヤル坊」
ヤルヴィはコード理論のレポートを机の引き出しから取り出した。一緒に封筒が出てきた。アダン家の封蝋付きの立派なものだった。彼はそれを未開封のまま奥へ突っ込んだ。
カレナードは実習用の靴を磨きながら、ハーリの話を心に置いた。
「秘密を持つなら、誰にも悟られないように持たなきゃ意味がないな。僕はキリアンに悟られてしまった。あれは不用意だった…。告白文とはよく言ったものだ。罪について考えれば、自分をさらけ出すことになる」
彼はキリアンをうかがった。彼はあいかわらず机にバリケードを築くように本を積み上げ、そのかげで懸命にレポートを書いている。
「キリアン、君に打ち明けるべきなのかな…。話して気持ちに整理がつけば、リンザのように分けられたら、告白文を終わりにできる」
キリアンがふと頭を上げて、カレナードを振り向いた。彼は分かっているのだ。思わず手元の靴に視線を落としたが、キリアンに応えるかのように顔を上げた。キリアンは頷いた。
カレナードは決心した。
「明日、話そう」
翌日は週末を控え、訓練生には余裕があった。カレナードに休日はなかったが、和んだ空気が彼の心を軽くした。夕食後、キリアンを秘密のベランダ部屋に連れて行った。彼は目を丸くした。
「お前、こんな所を知っていたのか」
「前に偶然見つけたんだ。ここに来ると落ち着くんだ」
「独り占めしていたな、こいつ!」
「もともとはワイズ・フールの占有で、僕は出入りを許してもらったんだ」
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