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浮き船ガーランド・第一部 作者:セオ

第8章「刃(やいば)の夏」

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第8章「刃(やいば)の夏」25 おっかない人

マリラはヒロの伸ばした手に触れた。
「マギア殿、ここで会うとは奇遇だ」
「畏れ入ります。こちらに人を訪ねて参りました。彼でございます」
ヒロは自分の影になっていたカレナードを女王の前に引っ張り出した。紋章人はまともに彼女を見ることができなかった。ただ頭を下げて願うばかりだった。
女王よ、一秒でも長く留まり給え、その眼の奥に自分を映し給え。
マリラは彼の首に下げた黒いケースに触れた。
「まだ書いておらぬようだな」
マリラの瞳に私情は全く無かった。今の彼女はガーランドの女王以外の何者でもなく、カレナードは想いを引っ込めておくしかなかった。
「書き上げます」
それだけしか言えなかった。マリラは軽く頷き、周囲は再び女王の祝福を求める声に満ちた。マリラの去った方を見つめている紋章人に、ヒロは言った。
「女王は君を気にかけられているようだ」
「そ…そんなことはありません。禁忌を破って契約をした身ですから、理由があるとすればそれだけです」
ヒロ・マギアは紋章人の素っ気ない返事にニヤニヤした。
「ジルーが言うよりおっかない人のようだな。カレナードさん」
ヒロの人懐こい視線は、カレナードに父を思い出させた。
「あなたはトペンプーラさんのお知合いですか」
「ジルーとは長い付合いだ。俺っちはヒロ・マギア、甲板材料部エキスパート、マギア・チーム代表者だ。君の玄街コードを分解しまくっているところさ」
「マギア・チーム…」
「君が玄街の輸送機に特攻した時に着ていた簡易装甲スーツね、あれ、うちの新作だよ。小型の高速飛行艇がもうすぐ試験飛行に入るんだ。君、トールの完熟飛行を終えたら乗ってみてよ。きっと気に入ると思うよ」
ヒロはそれだけ言うと、帰って行った。女王も次の場所へ去った。奥甲板は賑やかな余韻を残して昼の交替時間に入った。キリアンが携帯食を下げて階段の踊り場にやって来た。
「さっき話していたの、誰さ」
「甲板材料部のヒロ・マギアさん、マギア・チーム代表だって。小型高速艇がいい感じに仕上がっているらしい」
「お前、見込まれてるぞ。直々に声をかけに来たんだ」
「僕がどんな人間か確かめに来たんだ。僕はおっかないんだって」
キリアンは水筒から飲んだ水を噴きだしそうになった。
「間違ってないな。お前、確かにそんなところがある」
「そうかな」
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